「... そしてアベルは羊の群れを飼う者、そしてカインは土で働く者であった。」 [創世記4:2]二人の息子がアダムとエバに生まれた。長子のカインは土で働く者、弟のアベルは羊の群れを飼う者であった。
カインは畑で種をまく者、収穫する者であり、そして彼の土地の収穫物を喜んでいた。
「見よ、この存在する世界はただ私のおかげなのだ」と、彼(カイン)はいつも言う者であった。
アベルは羊の群れとともに牧草地に出て行く者で、毛を刈り、羊たちのミルクをしぼり、そして毛から衣服の糸を紡ぐ者であった。
「見よ、この存在する世界はただ私のおかげなのだ」と、彼(アベル)はいつも言う者であった。
このように、兄弟たちの間には誰がより重要かといったことでいつも口論があり、それで一緒に平和に住むことが出来なかった。ある日、カインはアベルに言った:
「なぜわれわれはけんかをするのか? さあ、われわれの間で世界を分けようではないか。
あなたは羊飼い - だから、世界の動物の全てをあなたが取りなさい。
わたしは土で働く者だ、だからわたしは世界の土の全てを自分で取ろう。
われわれがもう会うことはなくなるし、けんかすることもなくなるであろう。」
アベルは同意した、なぜならば彼は平和を愛する者であったから。ある日、アベルが羊の群れを野で飼っている時に、自分の杖を振り回し、こう叫びながらカインが彼の方に走ってきた。
「出て行け! この土は私のものだ! おまえは羊の群れを飼うことはできない!」
アベルは出てゆき、他の野で羊の群れを飼った、なぜならば彼は平和を愛する者であったから。
カインが木の太い枝を振り回し、こう叫びながら彼(アベル)の方に走ってきた。:「ここから出て行け! この野は私のものだ!
見よ、われわれは二人で世界を分けた時に、われわれは全ての土は私のものだと言った!」アベルは、彼の兄(カイン)は詐欺師でしかないと理解した。 もし全ての野がカインのものであるならば、どこで彼の羊の群れを飼うことができるのか?
アベルはとても怒って、カインに叫びを返した:「そしてお前が着ているその着物は、私のものではないのか?
見よ、それは羊の毛で出きている。すぐに着ている服を脱げ!」
カインは叫んだ:「私の土から降りろ!」
アベルは叫んだ:「お前の服を脱げ!」
このように、長期間にわたって彼らの間で口論があった、一方が叫んで威嚇すれば、他方が叫んで威嚇する、といった具合に。ある日、アベルが野で羊を飼っているときに、大きな石を振りまわし、こう叫びながら彼の方に走ってくるカインを見た。
「出て行け、私の土から!出て行け!」
アベルは彼に答えなかった、そして羊を飼うことを続けた。
カインは石を振って、アベルの体の全てを石で打った、彼は倒れて死んでしまった。
カインは自分の弟を殺したことを見て、たいへんに恐れ、この地からげ出した。
毎日、カインはあちらことらと放浪する逃亡者であった、そして彼自身の休息を見い出すことはなかった。カインは老齢期になるに至って、世界は一人の人間のおかげで満たされることは出来ないのだ、ということを理解した。
世界には、土で働く者が必要であり、また羊を飼う者が必要である。
それ(世界)は大地の恵み(果実)を与えるものであり、それ(世界)は乳と衣服を供給するものである。そして(この世界で)働く者の全てこそが、創造の恵みからなるこの世界を完成し継続させる者である。
そのようにしてのみ、人間は存在することが出来る。