「プリム」、エステル記の祭り
「プリム」の祭りは、王妃エステルが悪人ハマンからユダヤ人を救ったことを記念する祭りで、
街は仮装した子供や大人で賑わう。
「エステル記」は、全部で10章の短い物語で、登場人物も少なく読みやすい。
エステル記の中の登場人物
- ハマン
- モルデカイ
- エステル
- アハシュエロス王(日本語の聖書ではクセルクス王)
- ワシュティ王妃
「プリム」という名前の由来
エステル記 第9章:24〜26節
全ユダヤ人の敵アガク人ハメダタの子ハマンはユダヤ人絶滅をたくらみ、
プルと呼ばれるくじを投げ、ユダヤ人を滅ぼし去ろうとした。
ところが、このことが王に知らされると、王は文書をもって、ハマンがユダヤ人に
対してたくらんだ悪いたくらみはハマン自身の頭上にふりかかり、彼は息子らと共に
木につるされるよう命じられた。それゆえ、この両日はプルにちなんで、プリムと
呼ばれる。
「アダルの月14日と15日」が祭りの日、そのこだわり
エステル記 第3章:7節
クセルクス王の治世の第12年の第一の月、すなわちニサンの月に、
ハマンは自分の前でプルと呼ばれるくじを投げさせた。
次から次と日が続き、次から次へと月が動く中で、第十二の月すなわち
アダルの月がくじに当たった。
エステル記 第3章:12〜13節
こうして第一の月の十三日に、....
ハマンの命ずるがままに勅書に書き記された。
それは各州ごとにその州の文字で、各民族ごとにその民族の言語で、
クセルクス王の名によって書き記され、王の指輪で印を押してあった。
急使はこの勅書を全国に送り届け、
第十二の月、すなわちアダルの月の十三日に、しかもその日のうちに、
ユダヤ人は老若男女を問わず一人残らず滅ぼされ、殺され、絶滅させられ、
その持ち物は没収されることになった。
この後(第4章〜第7章)は、この物語の本筋に入って行くわけです。
物語のこの部分の解説はしませんが、結局は、
モルデカイとエステルの活躍により、王がハマンの悪事を大いに怒って、
ハマンは失脚するという結末。
エステル記 第8章:9〜10節
こうして第三の月のこと、すなわちシバンの月の十三日に、....
モルデカイが命ずるがままに文書が作成された。
それは各州ごとにその州の文字で、各民族ごとにその民族の言語で、
ユダヤ人にはユダヤ文字とその言語で、
クセルクス王の名によって書き記され、王の指輪で印を押してあった。
エステル記 第9章:1節
第十二の月、すなわちアダルの月の十三日に、
この王の命令と定めが実行されることとなった。
それは敵がユダヤ人を征伐しようとした日であったが、事態は逆転し、
ユダヤ人がその仇敵を征伐する日となった。
エステル記 第9章:21〜22節
毎年アダルの月の十四日と十五日を祝うように定めた。
ユダヤ人が敵をなくして安らぎを得た日として、悩みが喜びに、
嘆きが祭りに変わった月として、この月の両日を宴会と祝祭の日とし、
贈り物を交換し、貧しい人に施しをすることとした。
時代背景の考察
エステル記 第2章:6節
「モルデカイの家系は、...、バビロン王ネブカドネツァルに
よって、エレサレムから連れて来られた捕囚民の中にいた」
(解説)
- 紀元前586年「第一神殿の破壊」:
バビロン王ネブカドネツァルによってイスラエルが亡び、ユダヤ人の民はバビロニアに
捕囚された
- 紀元前538年「ユダヤの捕囚民を帰還」:
バビロニアを征服したペルシャ王クロスが帰還を許可
(全員が帰還ではなく住み着いたユダヤ人も多かった)
- 紀元前515年「第二神殿の再建」:律法学者エズラの指導により建設
- 紀元70年「第二神殿の破壊」:ローマの将軍ティストにより破壊
エステル記に教えられること
- 聖書の中で、主(神)の声が一言も書かれていないのは、このエステル記だけです。
神の存在はどこにあったのか。昔から賢者ラビたちはこれを議論し、
この物語に神を登場させた裏話を考え、伝承として残しています。
(この種の伝承はアガターと呼ばれ、なかなか味のある話が多いです)
- ハマンは反ユダヤ主義の原型である。
ユダヤ民族の絶滅というナチスによるホロコーストと同様な危機が、
すでに2,500年前にあって、聖書に書き残されていたわけです。
このようにエステル記はハッピーエンドに終わって祭りとなったのですが、...
雑書き
今回、エステル記を読み直して気がついたことを一つだけ...
「ハマンはニサンの月の十三日に、王の書記官を召集して勅書を書かせた」
とあります。これは何とユダヤ人の重要な行事である
「ペサハ、過越しの祭り(ニサン月15日から7日間)」の直前であり、
どのユダヤ人の家でもペサハの準備で忙しい時期です。
ハマンがこんな日に陰謀を仕掛けたのも、ユダヤ人の注意をそらす作戦だったのかと。
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