Dominant 7th Chord の一例:F7 (左手、右手)
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Jazzの楽典では、このように書かれています。
今回は、ヴォイシング(Voicing)を中心として、その中で初歩的な部分を実践してみます。Harmonize
メロデーに正しくコードを付けることをハーモナイズ(Harmonize)といいます。
Voicing
メロデーとコード(コードネーム)に従って、具体的に音を設定することをヴォイシング(Voicing)といいます。
Reharmonize
いったんハーモナイズされたコードを別のコードに変えたり、コードとコードの間に別のコードを挿入したりすることをリ・ハーモナイズ(Reharmonize)といいます。
Phrasing
コードや Tention や Available Note Scale をふまえた上で、アドリブのフレーズを創作することをフレージング(Phrasing)といいます。
賛美歌として有名な曲「いつくしみ深き」をヴォイシング(Voicing)の対象としてとりあげてみます。
まずハーモナイズ(Harmonize)ですが、Fコードを使ってこうしてみました。
これにヴォイシング(Voicing)するわけですが、さまざまな方法があります。 まず基礎となるべき「4 Way Close」を勉強してから、 ピアノに向いてそうな方法を調べてみます。
トランペットやサックス、フルートなど管楽器4人の奏者を想定して、
4つの音が1オクターブ内におさまるようにヴォイシングする方法を「4 Way Close(四声密集)」という。
なお、一般に、ヴォイシングに際して、メロデー音はトップ(Top)と呼ばれ、
その下にヴォイシングしてゆくわけで、最低音はボトム(Bottom)と呼ばれます。
Top とBottom を含むVoicing 全体が1オクターブ内におさまったものを「Close Voicing」、
1オクターブを越えたものを「Open Voicing」といいます。
さて、「4 Way Close」のエッセンスだけ取り出してみるとこうです。
トップがコード・トーンである場合
トップの下にある最も近いコード・トーンを順に配置する。
トップがコード・トーンでない場合
トップのすぐ下のコード・トーンを一つ省略する。 これは本来のコード・トーンのその音が、ノン・コード・トーンに転位したものと考えるのです。
では、課題曲♪いつくしみ深き♪の最初の4小節に「4 Way Close」を適用してみます。
(注意:最初の小節でオレンジ色のD音は、Fコード・トーンでないトップの例です)
参考:Fコード・トーンは、F、A、C、E
Bbコード・トーンは、Bb、D、F、A
C7コード・トーンは、C、E、G、Bb
基本となる「4 Way Close」をもとにして、その一部の音を1オクターブ下げて、Open Voicing する手法があります。
「Drop 2」Voicing:上から2つめの音を1オクターブ下げた形。
「Drop 3」Voicing:上から3つめの音を1オクターブ下げた形。
「Drop 2&4」Voicing:上から2つめと4つめの音を1オクターブ下げた形。
それでは、では、課題曲♪いつくしみ深き、この最初の4小節に適用してみます。
「Drop 2」Voicing の一例
「Drop 3」Voicing の一例
「Drop 2&4」Voicing の一例
基礎となるべき一般的な「4 Way Close」、「Drop」Voicing を勉強しましたが、 これらは主として、トランペット4本あるいはサックス4本を想定しています。 ところで、ピアノの場合には、同時にもっと多くの音を表現できるわけで、 さらに種々のヴォイシング(Voicing)の方法が使われます。
「Basic Chord Sound」とは、Root + Guide Tone による3声の Voicing です。
ここで、Guide Tone というのはコードの 3rd と 7th の音のことです。
ピアノ演奏の運指では、一般的にはこうなります。
左手 右手 Root 7th 3rd Top ここで、Guide Tone のバリエーションを考えるとこうなります。
コード 左手 右手 例 Major 7th Root 7th 3rd Top Fmaj7 minor 7th Root ♭7th ♭3rd Top Fm7、Fm7(♭5) Dominant 7th Root ♭7th 3rd Top F7、F7Lyd、F7alt、F7com.dim、F7aug その他 Root 7th ♭3rd Top FmM7 Root 6th 3rd Top F6 Root 6th ♭3rd Top Fm6、Fdim Root 7th 4rd Top F7sus4
改行
それでは、課題曲♪いつくしみ深き、最初の8小節に「Basic Chord Sound」を適用します。
上の譜面は、最初の8小節分だけですが、全16小節を通して聞いてみましょう。
♪いつくしみ深き/Basic Chord Sound (MIDI=1.0kbyte)
とりあえず、ヴォイシング(Voicing)はできたのですが、このままではちょっと単調な感じですね。 お洒落にするために、リ・ハーモナイズ(Reharmonize)してみたいと思います。
前述しましたが、いったんハーモナイズされたコードを別のコードに変えたり、 コードとコードの間に別のコードを挿入したりすることをリ・ハーモナイズ(Reharmonize)といいます。
♪いつくしみ深き、この曲の最初の小節はFコードですが、 実際には Major 7th(Fmaj7)としていましたが、 今度は Major 7th(Fmaj7) → Dominant 7th(F7)に変えてみます。
参考:Fmaj7コード・トーンは、F、A、C、E
F7コード・トーンは、F、A、C、E♭
それでは、課題曲♪いつくしみ深き、最初の8小節に「Basic Chord Sound」を適用します。 なお、ついでにリズムも少し変えて、小節内の第4拍目を強調してみます。
上の譜面は、最初の8小節分だけですが、全16小節を通して聞いてみましょう。
♪いつくしみ深き/リ・ハーモナイズ (MIDI=1.3kbyte)
前よりはいくらかましになったと思うのですが、もっとジャズっぽくするにはテンションを加えるという手があります。
先に勉強した3声の「Basic Chord Sound」に、テンションまたはコード・トーンを1音加えたものを「4 Way Spread」、2音加えたものを「5 Way Spread」といいます。
ここで、テンション(Tension) というのはコードの 9th と 11th と 13th の音のこと。
なお、追加するコード・トーンには、5th の音があります。
ピアノ演奏の運指では、一般的にはこうなります。
左手 右手 Root 7th 3rd,5th 9th,11th,13th Top 水色がテンション(Tension) です。
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ここで、バリエーションを考えると可能性はこうなります。
コード | ||||||
Major 7th | Root | 7th | 3rd 5th | 9th 13th | Top | Fmaj7 FM7 |
minor M7th | Root | 7th | ♭3rd 5th | 9th 13th 11th | Top | FmM7 F−M7 |
minor 7th | Root | ♭7th | ♭3rd 5th | 9th 11th | Top | Fm7 F−7 |
minor 7th ♭5th | Root | ♭7th | ♭3rd ♭5th | 9th 11th | Top | Fm7(♭5) F−7(♭5) |
Major 6th | Root | 6th | 3rd 5th 7th | 9th | Top | F6 |
minor 6th | Root | 6th | ♭3rd 5th 7th | 9th 11th | Top | Fm6 F−6 |
Dominant 7th | Root | ♭7th | 3rd | 9th 13th | Top | F7 |
Lydian Dominant 7th | Root | ♭7th | 3rd | 9th 13th #11th | Top | F7Lyd F7(#11) |
Altered Dominant 7th | Root | ♭7th | 3rd | #9th ♭13th #11th | Top | F7alt. |
Combination of Diminished Dominant 7th | Root | ♭7th | 3rd | #9th 13th #11th | Top | F7com.dim. |
Augment Dominant 7th | Root | ♭7th | 3rd #5th | 9th #11th | Top | F7aug F7(#5) |
Suspended 4th Dominant 7th | Root | ♭7th | 4rd | 9th 13th | Top | F7sus4 |
Diminished | Root | 6th | ♭3rd 7th | 9th 11th ♭13th | Top | Fdim Fdim7 |
表中のカーキ色の部分は「Dominant 7th」の変化を示しています。
水色がテンション(Tension) です。
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さて、応用ですが、これから使ってみたい代表的なコードを抜き出しておきます。
コード 左手 右手 例 Major 7th Root 7th 3rd
5th9th
13thTop Fmaj7
FM7Dominant 7th Root ♭7th 3rd 9th
13thTop F7 Lydian
Dominant 7thRoot ♭7th 3rd 9th
13th
#11thTop F7Lyd
F7(#11)
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Dominant 7th Chord の一例:F7 (左手、右手)
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♪いつくしみ深き、この曲にテンションを入れる前に、もう少しリ・ハーモナイズしておきます。
ポイント
Dominant 7th を、代理コードである Lydian Dominant 7th に変えること。代理コードについては次の節で説明しますが、この曲ではこんな風に変えました。
第4小節目: C7 → G♭7(#11)
第8小節目: F7 → B7(#11)
それでは、課題曲♪いつくしみ深き、最初の8小節に「Spread」Voicingを適用してみます。
水色がテンション(Tension) です。
上の譜面は、最初の8小節分だけですが、全16小節を通して聞いてみましょう。
♪いつくしみ深き/テンション (MIDI=1.7kbyte)
どうでしょうか、テンションが効果的に聞こえますか。
なんかジャズっぽくないって。そうです。メロデーラインやリズムを変えていないからですね。
フレージング(Phrasing)でメロデーラインを創作するのは、またの機会ということで。。。
最後に、代理コードについてちょとだけ解説しておきます。
「Dominant 7th」のコード表をもう一度ながめてみます。
コード 左手 右手 例 Dominant 7th Root ♭7th 3rd 9th
13thTop F7 Lydian
Dominant 7thRoot ♭7th 3rd 9th
13th
#11thTop F7Lyd
F7(#11)Altered
Dominant 7thRoot ♭7th 3rd #9th
♭13th
#11thTop F7alt.
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さて、コードF7 と コードB7 について、詳細をチェックしてみます。
code 対応1 対応2 対応3 対応4 Root #11th ♭7th 3rd 9th ♭13th 13th #9th F7(#11) F B E♭ A G - D - F7alt. F B E♭ A - D♭ - A♭ B7(#11) B F A E♭ D♭ - A♭ - B7alt. B F A E♭ - G - D どうです、コードF7(#11) と コードB7alt. とは構成要素が完全に一致していますね。
コードF7alt. と コードB(#11) も同様です。これが代理コードと呼ばれる理由です。
代理コードは、この Cycle of 5th と呼ばれる図の対角線にあるコードにあります。
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さて代理コードの応用についての補足。
Cycle of 5th 、すなわち 5度進行のドミナント・モーションにおいて、
コードFからコードB♭に移動するときに、いったん
コードFから代理コードBを経由してからコードB♭に移動すると、
いいことがたくさんあります。
コードF7 → コードB7(#11) あるいは B7alt.
ドミナント・モーションが強調されて緊張感が高まる効果があります。
コードB7(#11) あるいは B7alt. → コードB♭
進行がなめらかになる効果があります。
おわり
讃美歌「いつくしみ深き」