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鳥取大学乾燥地研究センター 田中 邦彦



 回のサマーセミナーは、研究室の先輩に誘われなんとなくメーリングリストに登録したところからスタートしました。結局そのなんとなくがセミナー開始直前まで続いてしまい、準備にほとんど参加できませんでした。準備段階からガン別邸他皆さんに比べると私のこのセミナーで得られたものは、少ないものだと思います。このことが一番周りの皆さんに対し申し訳無く思い、また自分自身がすっきりできないところでもあります。来年のサマーセミナーに参加が可能であれば、今年の分まで積極的に活動しようと思っています。
 かし、セミナーにおいてはそのようなことをまったく触れずとても良く接してくださった皆さんにとても感謝しています。また、このセミナーを通して新しい友人ができました。今後の付き合いを大事にしていきたいと思います。
 て、セミナー当日の感想ですが、今まで、自分はグローバルな視野から見た農業土木についてしか考えていませんでした。どちらかといえば海外に目が行っている人間です。今回のセミナーの「開発」というテーマは、先生方を始め、皆さんの発表が国内を視野に置いた「開発」であったため、自分とは関係無いといってしまえばそれまでですが、今まであまり考えたことの無い分野でもあったため、興味しんしんで聞かせていただきました。
 演を聴いて、まず私が思ったことは、自分の考えがあまりにも理想に走りすぎているということでした。もちろん理想を持つことはとても大事だとは思いますが、技術者・研究者を目指すわれわれにとってはやはり現実を見て、それに対し最善の策を考えるということがとても大事だということを強く感じました。
 ミナーの最終日に開発は正しいか悪いかという議論がありました。結論としてはなんとも言えないという一見中途半端とも思える結論に達しました。しかし、私個人もそれが現段階での最も適切な回答であると考えます。われわれ社会に生きる人間は開発のおかげで今の生活があります。これを捨てて、極端な話、原始時代のような生活ができるかといえば決してできるものではありません。少なくとも開発の恩恵をこの社会に生きる人たちは受けて毎日の生活を送っているわけですから、一概に悪いとは言えません。ただし、今のままでいいのかといえば決して良いとは言えません。そのしっぺ返しとして、われわれの生存さえも脅かす危険性のある環境問題に直面しているのです。
 自身が、このセミナーに参加するにあたり、プロフィールを書いたときに「開発」について思うことを書けという欄に、「すべての生物との共存」というものをまず第一に考えるべきだということを書きました。まあ、これは、先に書いた反省にあるとおり、あまりにも理想に傾いてしまっています。かといってこの考えがセミナーを通して変わったかといえば決して変わっていません。人間に他の生物に対する生殺与奪の権利などあろうはずがありません。しかし、人間が生きていくためにはある程度の開発によりいくらかの生物の命を奪わなければ現段階では不可能です。それならばまず考慮するべきは最小限の犠牲にとどめることでしょう。また、このことは「環境(自然)」に対してもまったく同様であると思います。環境への負荷をいかに少なくするかということを考えること、これを常に考えていれば致命的なミスを犯すことは無いのではないでしょうか。
 のようなことから私自身が達した「開発」というキーワードに対する結論は「開発は必要最小限度に押さえ、また自然への負荷を可能な限り軽減して行うということをこの種の仕事に携わる(できることならばすべての)人間が頭に入れておくこと」です。ここまでは、われわれ農業土木の人間ができることであります。そして、さらには社会科学の分野も視野に入れた更なる議論をすることが必要であると思います。農業土木という限られた分野だけで話し合うのではなく、政治・経済・国際関係などさまざまな社会科学の分野との連携無くしてはこのテーマは解決できないと思います。それくらいまでに、われわれ人間は地球中に勢力を広げてしまっています。
 21世紀は私たちの時代だと、われわれの世代は小学生のころからさまざまな人たちに言われてきました。わたしたちの時代である21世紀は「開発」という視野から見るとどのような世界になるのでしょうか?楽しみでもありますが、それ以上に不安です。しかし、ここまで文明を発達させてきた人間ですから、その間違いを正すことも必ずできると思います。最後の最後まで理想論を書いてしまいましたが、私たちの難題先の子孫になるかはわかりませんが、この理想が実現可能な目標に、そして実現できるように、そして私たちは少しずつでもそのような方向に向かうように、そしてこれ以上悪い方向に向かわないように、研究に取り組み、また今回のサマーセミナーのような話し合いをもっともっと活発に行っていくべきであると考えます。
 のような貴重な経験をさせてくださったすべての皆さんに感謝して終わりたいと思います。


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