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   Memo - 洪水到達時間と合理式 [2005年1月]
 ・排水計画等ではよく用いられる合理式.洪水流量をもとめるこの古典的な式はなかなか奥が深い.
 ・そんな合理式にまつわる覚書を記しておきます.
- 合理式 Rational metod
  • ピーク流出量のみが問題となるような傾斜地域の流出量推定に用いる式.
  • 一般に適用範囲は,ほぼ40km2以下の流域とされるが,実用的には流域の表層条件・降雨条件がほぼ一様と見なされる限り,200km2程度までは利用できるとされている.
  • 降雨強度を流量に換算する式あるいは連続式と見なせる..
  • そもそも・・・
    • flood peak discharge formula としてKuichlin(1889)が提案
    • 流域面積1km2の場所で,1時間に平均1mmの降雨があったとするとき,その流域に降った雨が1時間ですべて流出してしまうとすると,その流出量(qc)は次式となる.
      • qc = 1 / 3.6   (m3/s)
    • よって,流域面積がA(km2)で,降雨強度がI(mm/hr)のときのピーク流量(Qp)は,
      • Qp = 1 / 3.6 ・ I ・ A    (m3/s)
    • となる.しかし,実際は降雨の一部は遮断されたり,窪地に貯留されたり,蒸発したりするので係数K をもちいて
      • Qp = 1 / 3.6 ・ K ・I ・ A    (m3/s)
    • とする.この K を流出係数or流出率とする.
    • また,Iを洪水到達時間tp(min)内の平均降雨強度(mm/h)として,K ・I=reとおき,このreを洪水到達時間tp(min)内の平均有効降雨強度(mm/h)とすると,一様な雨量強度Iがあるときの最大洪水流量を求める式となる.
      • Qp = 1 / 3.6 ・ re ・ A    (m3/s)
  • 合理式では,この洪水到達時間tpを適切に求めることが重要になる.
- 洪水到達時間
  • 定義
    • 流域の力学的最遠地点に降った雨水の擾乱が流域下流端に伝播する時間
    • 雨水が流域より河道に入る流入時間と,河道内の流下時間(洪水伝播時間)との和
  • 流域における降雨〜流出応答の遅れを表す1つの指標
  • 一般に,流域が広くなると,洪水到達時間は長くなる.
  • 同じ流域でも平均有効降雨強度が大きくなると,洪水到達時間は逆に短くなる.この関係は両対数紙上でほぼ直線関係を示す.
  • 洪水到達時間推定式
    • 角屋・福島の式(1976)
      • tp = C・A0.22 ・re-0.55
      • ここで,C:流域の状態によって変わる定数.
    • ルチハ(Rziha)式
      • tp = L / v
      • v = 20(h/L)0.6 or v = 72(h/L)0.6
      • ここで,L:流域再遠点からの流路長(m),h:再遠点との標高差(m)
    • Snyder(1938)による洪水到達時間
      • 有効雨量の中心から最大流量までの時間遅れを,洪水到達時間tgとしている.
      • tg = Ct ・ ( L・L')0.3
      • ここで,Ct:係数(1.8〜2.2),L:流域再遠点までの流路長,L':流域面積の重心点から下流端までの距離.
    • 流下時間の推定式
      • 土木研究所式
        • 都市流域:T=2.40×10-4(L/√S)0.7
        • 自然流域:T=1.67×10-3(L/√S)0.7 
        • ここで,L:流域再遠点からの流路長(m),S:平均勾配,T:流下時間(h)
    • Formulas for Estimating Time of Cncentration
      • Tc = 0.0664 ( L / √S ) 0.77 農地流域:0.003<A<0.5km2,Kirpich(1940)
      • Tc = 0.1610 ( L / √S ) 0.64 アメリカ中西部:0.012<A<18.5km2,Chow(1962)
      • Tc = 0.927 ( L / √S ) 0.47 イギリス,NERC(1975)
      • Tc = 0.128 ( L / √S ) 0.79 米・加:0.01<A<5840km2,Watt and Chow(1985)
      • etc
- 最大洪水寄与時間
  • 定義
    • ピーク流出量に最も大きな影響を及ぼす降雨の時間幅
  • 流出量が最大になる時刻から,時間を遡りながら順次平均降雨強度を求めていき,その最大値を探索することによって算定する.
- 合理式の持つ意味
  • ピーク流出量を推定するという目的のもと,合理式を用いるとき,合理式は連続式であり,洪水到達時間が運動式となる.
    • 合理式・・・・・・・・・連続式
    • 洪水到達時間・・・・運動式
  • 貯留関数法では,この合理式を利用して大流域を小流域に分割して連続条件を設定し,流域からの流出量を求める.
    • dS/dt = 1 / 3.6 ・f r A - Q
    • ここで,S:流域の見かけの貯留量(m3),Q:流域からの直接流出流量(m3/s),f:流出率,A:対象分割流域面積(km2),r:平均降雨強度(mm/h).
- 参考資料等
  • 水循環 貯留と浸透 第52号/2004.3
  • 水圏水文学
  • 大学土木 河川工学
  • 河川水文学 
  • 灌漑排水(上)
  • 灌漑排水(下)
  • 角屋睦・福島晟(1976):中小河川の洪水到達時間,京大防災研年報19-B,pp.143-152.
  • 竹下伸一・別枝宏平・三野徹・中村公人(2006):遅延率を用いたため池洪水緩和量推定法,農土論集,243,pp.15-24.

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