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   分子拡散係数、乱流拡散係数、分散係数の相違点について [1997年]

 分子拡散とは、「ランダムな分子運動(ブラウン運動)による水粒子の錯乱現象」でありる。フィックの法則を用いて「拡散方程式」というかたちで表現される。フィックの法則に含まれる係数を特に分子拡散係数と呼び、物質が濃度の高い方から低い方へ向かう割合を示している。

 また乱流拡散とは、「乱流運動による水粒子のランダムな錯乱現象」である。これは大まかには分子拡散と似ているが、分子の持つ拡散の割合よりも非常に大きなスケールを持つものである。この乱流成分を表現するために、簡単なフィックの法則と同じ形式で表現し、その運動の意味を明確に区別している。

 一方分散は、異なった水深や場所ごとに流速の大きさが異なる流れにおいて、流速分布が一様でなくなるときの鉛直方向での拡散現象と、卓越する流れ方向と垂直な横断方向での拡散現象が組み合わさってもたらされる対象物質の粒子や粒子群の錯乱現象をいい、厳密に拡散と区別している。

 これら三つの現象を表す係数の相違点をあげる。まず分子拡散係数は、温度や圧力、物質の種類など物質輸送の概念を満たす条件下で成立する定数であるのに対して、乱流拡散係数は壁からの距離あるいは、主流の状態によって著しく変化するという特徴を持つ。たとえば乱流拡散係数は流れの中心部では分子拡散係数の10の3乗から5乗程度であるが、壁近傍では急激に減少し逆に分子威嚇産気異数の方が圧倒的に大きくなるなど、極めて複雑な性質を持つ。

 一方分散係数は、分子拡散、乱流拡散を内在しつつレイノルズ数によって決定される流速分布の形状に大きく左右されるという特徴を持つものである。


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