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   大橋洋治:アジアNo.1を目指して [2005年11月]
                                  -講演会聴講レポート in 慶応MCC夕学五十講
今回の講演者は,全日空の会長,大橋洋治氏.
2001年に社長に就任するも,9.11同時多発テロ,SARS,鳥インフルエンザ,石油価格の高騰など,航空業界を揺るがす様々な出来事が多発する中,経営を軌道に乗せ,邁進する体力をつけた人.

そして,いま向かう先はアジアNO.1の座.

大橋氏の原点は,全日空入社直後に経験した3つの墜落事故なのだという.
昭和41年2月の東京湾墜落事故.
同年,11月の松山便墜落事故.
そして,昭和61年の雫石事故.
遺体を遺族に引き渡す際に味わった想いを決して忘れない.と.
自らの気を引き締めさせるように冒頭にまず,こういった想いを語っていた.

安全を一番におくことは,当然としてアジアNo.1になるために必要なこと.
それはクオリティ・顧客満足度・価値創造の3つ充実させること.

まずは,安全かつ安い航空運賃を提供するための徹底したコストダウン.
航空機産業のさまざまなコストを具体的な数字を明らかにしつつ説明.
効率的な機種の変更,収益率の高い羽田便に対する戦略.
満足度,価値を高める,Edyカード等の質の創造戦略.

そしてなにより人を育てたい.
他社に決してまねされることのない競争力のコアは,“人”であると.

航空会社には,とにかくイレギュラーが多いという.
日々の天候,社会情勢などなど.だからこそ,そのイレギュラーに動揺しない,明るさ,元気さが社員全員に必要なのだと.

それには企業が向かう方向性を,リーダーが率先してきっちりと示す必要がある.
ということで,彼は社長時代,ダイレクトトークというさまざまな現場の社員達と話をする機会を100回以上もうけ,トータル6000人の社員と率直に話し合ってきたという.
最初は,意識のズレも大きく,不平・不満が大半を占めているが,回を重ねる毎に前向きな意見が出てくるようになるのだと.


とにかく“人”を強調して,彼の話は終わりました.


今回は1時間近く質疑の時間が儲けられたことと,昨今の航空業界を巡る情勢はよく報道されるためか,多方面からさまざまな質問が寄せられていました.

例によってわたしも
“人が大切という話がありましたが,社長・会長という目から見て,ANAにとって,どういう学生・新入社員を求めていますか?”
という質問をしました.

答えは以下の通り
“挨拶,応対がきちんと出来ることは,当然.
 私たちは人物を見ています.知識を見ているわけではありません.
 徳育がきちんと備わっているかどうかを第一義に見ています.
 それから,忘れてはいけないのはグローバリゼーション.外国語の能力ではありません.
 世界のことをちゃんと見ているか.視野をちゃんと広くしているかです.
 それから,明るさ.これもとても大事な要素です.”

学生さん達!ココ大事ですよ!テストに出ますよ!(笑)


全体の印象としては,大橋氏は一企業を勤め上げた昔気質の人.いわゆる旧来の日本社会の大会社社長という感じ.昨今の新興企業社長のガツガツとした感じはありません.
ダイレクトトーク云々いうわりには,講演内容・質疑応答等で,若干具体性に欠けるというか,抽象的な表現が多かったように感じます.
ただ多くの書物を読んだりして勉強されてきたんだろうなっていうのは,言葉の端々に見て取れました.
そんな大橋氏の座右の銘.

「事の外に立って,事の内に屈しない」
「退路を断って,背水の陣で望め」
「義を明らかにして,利を計らず」
「もの言わぬ,ものがもの言う,もの作り」

含蓄がありますね.

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