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   原田隆史:カリスマ教師が語る人材開発論 [2005年11月]
                                  -講演会聴講レポート in 慶応MCC夕学五十講
今回の講演者は,原田隆史氏.
もともと大阪市内の中学校教師だった彼は,体育の授業を受け持つ傍ら陸上競技部を指導.「生活指導の神様」とよばれる.3校目に赴任した松虫中学では7年間に13回,陸上日本一を誕生させ注目を浴びる.
2003年から天理大学の非常勤講師となり,スポーツ選手のメンタルトレーニング指導,教育現場再生プログラム支援,企業の人材育成支援などで活躍している方です.
くわしくは,こちらへ
株式会社オフィス原田 http://www.officeh.com/index1.html
原田隆史公式ページ  http://www.haradatakashi.jp/index1.html


3万人の生徒とつきあうの中気づいたこと.
それは人には2種類の人間がいる.

同じ失敗をする人と,失敗をくり返さず確実にステップアップしていく人であるという.
この差は歴然としている.
では,失敗をくり返さないようにする教育とは?

長所に気づき,短所に気づかせる.
しかも,それを教えるのではなく,自分で気づかせる.

ではどうする?目指すべき人材開発の方向性はズバリ

“生きる力を備えた自立型人間”の育成であると彼は言う.

ここでいう生きる力とは,以下の3つ.

1.夢を描き,目標を変える.
  達成のための方法を考え,達成しきる力.
  被害者意識がない.

2.心のコップ(生き方態度)がいつも上を向いている.

3.「心・技・体・生活」のバランス.
  健康と安全の獲得と向上.

これは,彼は多くの中学生と真剣に向き合い,
積極的に異業種と交流し,
多くの書物の中にヒントを探しながら確立した基軸.

実際,彼の話はものすごいリアリティとともに語られる.この基軸に至るまでの,細部の細かなストーリーの中にも多くの含蓄ある言葉・エピソードがあふれている.

・人間は経験の数で大人になるのではない.
 経験の乗り越え方で大人になるのである.

・『主体変容』
 安易に何かを止めたら,次にそれよりも良いモノが来ると思ってないか?
 自分を変えないで,状況を変えても結局いっしょ.
 自分が変わった人でないと,相手の変化に気づけない.

・崖っぷちになってやらざるを得ない状況をきちんと作る.
 目標を公言する.

・『準備力』
 日本一になる子は,きちんと日本一の準備をしている.
 試合前にやり残し感がない.
 強い選手は鞄がデカイ.いつも気を抜かないで準備されている.

・『顧客の創造』
 心に訴える商売をしろ.
 見えている目の前のものではなく,そのものの裏にある事実を見る.そこに訴えること.

・『心作り指導』=メンタルトレーニング指導
 緊張しているときにでも97%の確率で成功できるメンタル作り.
 それには徹底した基礎・基本の指導による精度の向上.
 その心は,禅と宮本武蔵.外国製ではない.日本製の心作りだ.

・『意味づけ教育』
 本気で話して,とことん想いを共有する.
 なぜやるのか.やることで何が得られるのか.納得するまで話してから取りかかる.
 カルロス・ゴーンは200回の現場ミーティングをした.

・『オーラによる教育』
 若者は規則・ルールに従わないが,オーラに従う.
 オーラとは,指導者の資質.

 「主体変容」 人のせいにしない.自分を変える
 「率先垂範」 まず指導者が模範を見せる
 「ハンズ・オン指導」 指導者こそ率先してもっともいやがる仕事をする.
 「本気のすさみ除去」 ニューヨークのジュリアー二市長の作戦.
            まずは徹底したすさみ(汚れ,乱れ)の除去
            些細なすさみが,人の心を徐々にすさませる.


結局,教育とは指導者の『人間力』である.と彼は言う.

臨機応変に,厳しく・優しく・楽しくできる人.

仕事と思うな人生と思え.:目の前の仕事を全力でしろ.
言葉を大切にする.   :同じ事を諦めないで言い続けられるかどうか.
心を広くする.     :“ありがとう”って咄嗟にいえる人に人はついてくる.
タイミング・イズ・マネー:今すぐ変われ!
敵は自分        :昨日の自分と戦うのだ.
想いはかなう      :夢を持続させること


とにかく人材開発するまえに,指導者たる自分の姿勢をきちんと正せ!
この一言に尽きる講演でありました.

今回も宮崎会場に質問の機会が与えられたので,質問してきました.

質問はこれ
“大学生の場合,中学生のように濃密な接触は難しく思います.
 限られた時間・接触の中で,自立型人間へ向かわせるための指導のコツがあったら教えて下さい”

答えはこんな感じ
“短い時間で指導しつくすことは無理.接することの出来ない時間に訴える方法が必要.それには身近な成功例を披露していく.なるべく身近な先輩達の成功例を事細かく教えていくことで,意識が変わるはずです”と.


濃い関西弁と,ざっくばらんな話しぶりは取っつきやすく,おなじ教員として,とても役に立つ内容で,90分の講演があったいう間でありました.いろいろ講演を聴いてきましたが,かなり上位にランキングされる講演会でした.


関連書:カリスマ体育教師の常勝教育 2003/原田隆史 日経BP社
     大人が変わる生活指導 2006/日経BP社 原田隆史





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