BONO's page -> マイ・研究室 -> 保管ページ ->

   姜尚中:東北アジア共同体に向けて〜日本とアジアの共生〜 [2006年1月]
                                  -講演会聴講レポート in 慶応MCC夕学五十講
今年,最初の講演者は,ビッグネームです.

東京大学情報学環学際情報学府大学院教授の姜尚中.

アジア,とくに朝鮮半島情勢などにくわしく,最近よくテレビや雑誌などで見かけますね.
演題も“東北アジア共同体”についてということで,おもに日本と中国,韓国,北朝鮮 プラス アメリカの関係性についてでした.

さて,“東北アジア”っときいて違和感を覚えませんか?
 という問いかけから話が始まりました.
日本の主要メディアでは,“北東アジア”と呼ばれることが多いからです.
本来,漢字の読みでは“東北”とすべきところを,なぜ英語読みであるNorth-East=北東と表現するのか?英語ではSouth-East Asiaと表現する地域を,我々は“東南アジア”と表現するのに・・・.

これにはさまざまな理由が考えられるが,
一つには,戦後日本は東南アジアには目を向けるも,東北アジアには目を向けていなかったこと.
一つには,戦中に東北アジア地域を武力支配したことへの反省.
一つには,アメリカのフィルターを通してアジアを見ようとしていること.などがあるという.

だが,9.11で世界は変わった.
多くの有識者達は,唯一の超大国となったアメリカの単一極化が進行すると考えたが,結果的には多極化が進行した.さまざまな力の競合関係が起き, それがグローバリゼーションの波をうみ,そしてそれが結果として国家としてのアイデンティティ=ナショナリズムを強く意識させるようになった.
ローカル・ナショナル・リージョン・グローバルの4層構造を同時にとらえ,かつ世界の中の国家を意識せざるを得ない状況になったという.

ナショナルが日本.
グローバルが世界だとすると,日本にとってリージョンとはどこか?

中国,日本,朝鮮半島・・・そう東北アジアなのである.

世界の経済大国へと変貌しつつも,依然として強い社会主義の中にある中国.
ほとんどアジア唯一と言っていい(仮にも)民主主義国家である日本.
そして,世界では終結したと思われている冷戦を依然として残したままの朝鮮半島.

他に類を見ないこの多様なアイデンティティの中にどうやって共同体をつくるのか?
母体を同じくするEU諸国とは,わけが違う.
中国・北朝鮮の社会主義体制は,ソ連によって強制的につくられた旧東欧社会主義諸国とはわけが違うという.

朝鮮半島の冷戦は,民衆の力では終わらせることは出来ない.
イラクのようなレジウムチェンジでも,終わらせることは出来ない.
もはや交渉しかないと姜氏はいう.6者協議.これしかないと.

外交は,政治家の力で形成されるわけではないという.
外交は,国家の世論で形成されるのだと.
すなわち,我々国民の総意なのだと.


多様な国家が連なるアジアならではの共同体を作っていこう.
問題解決型のゆるやかな共同体を.
日本がそのデザインを提示しよう.そう訴えながら姜氏は話を結びました.




いま金正日氏が極秘に中国を訪問していますね.
そして,時を同じくして,アメリカのヒル国務次官補が,北京を訪れている.
これが意味するものは・・・・こういったタイムリーな話題にも触れながら,とくにこの日本では非常に繊細で難しい問題について,静かに,抑えるように,それでいてとても流暢に語っていました.

2006年の初っぱなは,とても重い空気が会場を包む講演会でありましたが,

世界の中の,アジアの中の日本を,各人が,今一度考えていかないといけないな

っと強く感じることができた有意義な時間でありました.


[前画面に戻る]

▲ページトップへ

Copyright(C)1998 Shinichi Takeshita(竹下伸一).All Rights Reserved.