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   池田 弘:アルビレックス新潟の奇跡と軌跡 [2006年1月]
                                  -講演会聴講レポート in 慶応MCC夕学五十講
今回の講演者は,アルビレックス新潟の代表取締役会長,池田弘氏.
この方実は神主さん.また,学校法人の会長でもあります.


アルビレックス新潟.サッカーの好きな人はよくご存じでしょう.
Jリーグでも,地域の熱狂的なファンが多いといわれる鹿島アントラーズや浦和レッズ.
でも,いまやその地位をアルビレックス新潟が奪いつつあります.

1試合あたりの観客動員数は,Jリーグではトップ.
ホームゲームともなると4万2千人を収容するビッグスワンが満席になります.


でも,このチーム.
発足したのはなんとほんの12年前.
紆余曲折あった と思い出すようにしみじみと池田氏はいう.


日韓共催ワールドカップを新潟の活性化につなげたいという地域の要望を受けて,建設されたサッカースタジアム・ビッグスワン.
地元のプロ・サッカーチームをもたない地方都市には,おおよそ似合わないその巨大な建造物.
ワールドカップの試合の誘致は出来ないだろうといわれていた.


地域の威信をかけての誘致.なんとしてでも成功させるために,まずは,新潟にプロ・サッカーチームを作ることから始めた.それが,アルビレックス新潟の最初の姿だった.

地域リーグからはじまったこのチーム.当然ながらそう簡単にはJリーグにあがれない.


でも,時を同じくして立ち上がった『Jリーグ100年構想』のおかげで,なんとか新潟ビッグスワンがワールドカップ会場に選ばれた.

盛り上がったワールドカップ.
新潟で世界のサッカーを見ることが出来た.


でも,それは・・・.
アルビレックス新潟の存在意義がなくなった瞬間でもあった.


チーム存亡の危機.

池田氏には,目に焼き付いて離れない光景があるという.
それは1994年アメリカワールドカップ会場で見た,サッカーを見る観客達の熱狂.
9万人の人間の喜びが作り出す異空間.

この熱狂を新潟に・・・.
その想いで地元企業に,地元住民に,地元自治体に熱心に働きかけた.

チームの経済事情を隠すことなくサポーターに提示した.異例のことだった.
地元住民に無料観戦パスを配布した.異例のことだった.

無料観戦であつまった満員の観客が,喜びを共有した.
喜びの体験が,次第に伝染していく.
それはサッカーを見るためにスタジアムにいくのではなく,大勢の人間と喜びを分かち合うためにスタジアムにいくという姿.
わが街のチームで感動を体験する.それは熱狂へとかわる.
そうして,いつしか自分がチームを支えているという感覚へ.

これが,“企業が運営するチーム”ではなく,“地域が育てるチーム”への原動力となった.


そんな中での,新潟中越地震.
ふたたび困難に見舞われながらもチームは存続することができた.
また一つ一体感が生まれた.


それが.アルビレックス新潟に独特の気風を与えた.
家族連れの多い観客.親子の会話が生まれた.地域の会話が生まれた.
ブーイングがおこらない観客.ボランティアが増えた.


めざすは“マンチェスター”,“リバプール”,“バルセロナ”.
“ニイガタといえば,アルビレックス”そういう都市をつくりたい.

そう遠くを見つめるように夢を語りながら,池田氏は講演を締めくくりました.




穏和な表情は宮司だからでしょうか.
講演の雰囲気にも,いつものビジネス色は薄れ,文字通りアルビレックスの奇跡を体感するような感じでした.

わが宮崎にもプロ・サッカーチームが欲しい.そんな気持ちになった今回の講演会でした.


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