今回も豪華!脳科学者の茂木健一郎氏が講演者でした. 茂木氏は,ソニーコンピュータサイエンス研究所のシニアリサーチャーで,神経脳科学の研究者.最近では「クオリア」系の著書を多く出してますね.あと,NHKのプロフェッショナルの司会もされてます. いま,人間の脳はものすごい変革期を迎えているというところから,話が始まりました. 第一の変革期は,言葉が誕生したとき.それまでのコミュニケーションのカタチを劇的に換えた言葉の誕生は,ものすごいインパクトを脳に与え進化を促したという. 第二の変革期がまさしく今. ITの誕生によって,これまで経験してこなかった活用法を脳は求められているのだという. いままでは活字を通した“知識”の蓄積・習得を主に脳が担ってきた. しかし,いまその知識の蓄積はコンピュータによってなされるようになった. 知識の蓄積量の違いによって社会生活が営まれた時代は終わりを告げ,皆が同じ知識を持っている,あるいはアクセスできることをベースとした新しい能力が求められるようになった. その能力とは「創造性」と「コミュニケーション能力」であると茂木氏はいう. 創造性とコミュニケーション能力.わけて考えることが難しいこの二つの能力. 必要とされるこれらの能力を私たちは,どう獲得し,強化していけばいいのか. 大事なのは,addiction=中毒であるという. 単に何かにハマるということだけでない.ライフワークや,伴侶を決めるといった決断も実は人間の欲望に,積極的に寄り添うこと. でもこの欲望というもは,とても気まぐれ. はじめは急激に盛り上がっても,時と共に飽きてしまう.そう持続性がないのだ. この気まぐれな欲望をとどめておくにはどうすればいいのか? このとき大事なのが,contingency=偶有性であるという. 偶有性.半分規則的で半分偶発的な性質. そうある程度どうなるかを予想できつつも,小さなハプニングに満ちていること. これが人の心をつなぎ止める. 人は誰でもこの偶有性を持っている.でもコンピュータはこれを苦手とする. 人の会話は,もっとも偶有性に満ちたもの.話が脱線してなかなか思うように話が進まないものだ. 人の脳は,沢山の記憶が詰まっている. でも,いつも同じ記憶を引っ張ってくるとは限らない.そう人間の脳こそもっとも偶有性を持っていて,時折脈絡のない記憶同士をつないでしまう. でも,そのときにこそ創造性が発揮される. アイデアとは,過去の記憶の組み合わせに他ならない・・・とよく言われますね. だから,意図的に記憶の変な結びつきを引き起こすことで,創造性が発揮されるのだ. 「創造することは思い出すことに似ている」ともいう. 過去の記憶のストックがあればあるほど,創造性が高まる. そして,思い出そうという意欲があればあるほど,創造性が高まる. 創造性 = 体験 × 意欲 なのだと. その後,科学におけるセレンディピティ,快楽のもたらす脳へのプラス効果,The first Penguin,といった創造性を働かせる為のあれこれを豊富な彼のアーカイブのなかから披露していました. 彼の著書もそうですが,話がうまいですね.とても脱線的で(笑) どのエピソードも非常に面白くて,ヒントに満ちていて,聞いているうちにこちらも意欲が湧いてくる感じがしました. どれもネタになるので,ここに書きたいところですが・・・長くなるので,この辺で.ってもう十分に長いんですが(^ ^ゞ 関連書: 生きて死ぬ私 2006/ちくま文庫 茂木健一郎 脳と仮想 2004/新潮社 茂木健一郎 ひらめき脳 2006/新潮新書 茂木健一郎 [前画面に戻る]
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