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   宋 文洲:やっぱり変だよ日本の営業2006 [2006年5月]
                                  -講演会聴講レポート in 慶応MCC夕学五十講
今日の講演者は,最近メディアでよく見かける宋 文洲 氏.
ソフトブレーン社の会長です.

21才の時に中国から,北大へと留学してきた宋氏は,土木を学び工学博士を取得.いよいよ帰国というときに,祖国で天安門事件が発生したため,危 険を避けるために一時的に日本で仕事に就くことになる.しかし,最初の就職先は,小さな会社.勤め始めてすぐに不当たりを出して倒産.

それならばと学生時代に開発した解析ソフトを製品化し,売るための会社をつくることにした.しかし,片言の日本語,営業のノウハウもない.あるのは,自分で開発したソフトは,顧客のニーズにあっているという確かな自信だけ.

でも,確かにその自信は伊達ではなかった.宋氏の実力を知る学生時代の先輩・後輩達は,勤め先でそのソフトを導入し始める.するとたちまち評判が広がっていく.

売り始めて1ヶ月で売り上げ80万.3ヶ月で100万.3年で3億を売り上げたという.それまでは月8万円の奨学金で生活していたのに.

売り上げるために宋氏がしたことは,ただ一つ.
偏見や予備知識のない真っ白な頭で,最初から最後まで自分でシナリオを考えただけ.

それを実行すれば,自然と売れる.それだけなのに日本企業の“営業”は売れない.その違いに気づいた彼は,日本企業の営業の問題を指摘する.


・客は決して神ではない.
  神ならば,改善を提案することはできない.神は完全だから.

・営業に営業をやらせていない.
  日本の営業マンは,多くの雑務を抱えすぎている.
  営業マンが全仕事の中で営業している時間は驚くほど少ない.

・日報ってなに?
  日々の営業報告は本当に必要なモノなのか?上司との交換日記に過ぎないのでは?

日本の営業は,あまりに属人化しすぎていると宋氏はいう.
根性だけで営業の仕事は出来ない と.

きちんと分業化して,組織として営業マンが営業できる体制を作ること.仕事の行程を“見える”用に数値化して,標準化すること.

この行程を宋氏は,医者のたとえでわかりやすく説明していた.
多種多様の人を診察する医者.目の前に座る患者の容態は千差万別.
そんな中で,患者の治療のためにまずすることは,
体温をはかる.血の成分をしらべる.レントゲンでみる・・・
そうまず体の状態を“見える”ようにする.
体温をはかる場合,男でも女でも,人種が違っても,脇の下か口の中ではかることが出来る・・・これが“標準化”であると.
ここまでくれば,治療の仕方は見えてくる.


個人の能力に覆い被さる営業ではなく,組織としての営業力をあげることが大切だと説いて,彼は講演を結びました.


工学博士を持っているだけあって,彼の話の中には沢山の科学の言葉が出てきます.再現性,試験,実験,数値化,標準化,細分化etc.仕事の中で も,特に雑多なものが混じる営業という職種の中にある本質を見抜く彼の能力は,この理系的発想から出てくるんだろうなと,強く感じました.

その能力と,彼の愛嬌ある話っぷりに多くの人々が魅了されてきたんだろうなと.

営業の仕事と,私の仕事はほとんど縁がありませんが,取り組む課題を視覚化し,プロセスを明確にして,分業していくという過程は,示唆に富んでいてなかなかに興味深い内容の講演会でありました.


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