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   武田美保:道を究めるということ [2006年6月]
                                  -講演会聴講レポート in 慶応MCC夕学五十講
今回は,シンクロスマーの武田美保さん.
アトランタ,シドニー,アテネと3大会連続でオリンピックに出場されているので,もうみなさんご存じの方ですね.

最近は,競技者としては引退して,メディアにでてスポーツの解説をしたりとか,講演を行ったりとか,あとミュージカル?「マッスル・ミュージアム」なんかにも出演されているようです.

水着姿でない武田美保さんを見たのは,初めてでした.
もっとがっしりとした感じだと思ってましたが,結構かわいらしい感じの人なんですね.
3大会連続してオリンピックに出場し,メダルを獲得するほどの腕前ですから,講演タイトル「道を究めるということ」にぴったりな感じがします.

お話は,実家京都でのシンクロとの出会いから始まって,井村コーチとの出会い,初めてのオリンピック,そして立花選手との出会いと,アテネに至るまでの道のりを理路整然と話をされていました.

5才の頃通い始めた水泳教室.年長のお姉さんたちの美しい泳ぎに魅了されて,始めたシンクロ.やればやるほど好きになっていったという.
そして,その気持ちを精一杯後押ししてくれたのが,家族だったのだという.


どう後押ししたか?


それは“会話”なのだと.


水泳教室から帰ると,「今日はどんな練習したの?」「どんなところを褒められたの?」「どんなところを注意されたの?」「昨日できなくて,今日できた事はある?」・・・という質問の数々.
それらの質問に徹底して答えることを求められたのだという.
説明がわかりにくいと
「わからへん.もう一回説明して」と容赦なく突っ返される.
でも,そのおかげで,自分の泳ぎ・心を自然に客観的に見る姿勢を身につけることができた.自分で考える癖がついていた.あのころからそれを始めていたことが,とても大きな武器になった.
おかげで,小5ですでに目標ができた.
目標に向かう喜びを持つことができた.
ますます練習が楽しくて仕方なかった.
するとどんどん上手くなっていく.
友達も,先輩もみんな追い抜いていく.

当然,まわりの妬みややっかみもあった.
中途半端な強さだと,つけいる口を与えてしまう.
唖然とするほど,上手くなってしまうと人は何も言わなくなることを学んだ.

そんな時に出会ったのが,あの怒鳴り姿が印象的な井村コーチだったという.
コーチに請われたのは“一流”になること.

いつも良い成績を納める人のことではない.それに加えて品格を持つ人であると.

さまざまな技術も学んだけれども,コーチにたたき込まれたのはこれだったと.

私も“センセイ”であることから,このコーチと武田氏との関係性には,とても興味を持ちました.
後で,質問の時に聞いたのですが,
コーチはとにかく,“ブレ”がなかったといいます.
言い続けていることは一緒.だから,たどり着くことができると.
最初は怒られていることがわからない.でも,それは自分の心が閉じていただけ.
それを知ってて,コーチは言い続ける.嫌われることを臆せず,決してブレることなく.
アトランタ,シドニーを経験した後,訪れた最後のオリンピック:アテネの頃には,武田氏はまさしく“一流”になっていたんだろうなと思いました.


それは,そのころ武田氏が感じていた感覚のなかに見ることができます.

もっとシンクロで楽しいことを見つけたい.
勝ちにこだわりたいけれども,シンクロそのものを愛おしく感じた.
感性がとぎすまされ,体の変化を感じられるようになった.
自分を磨き,やり残し感が無い状態を作れるようになった.etc


究めた人の感覚から紡ぎ出される言葉には,どことなく普遍性のようなものがありますよね.これっていつも不思議だなと思いますが,今回の武田美保さんにも同様の感覚を持ちました.
ビジネスパーソンの話も役に立って面白いですが,やっぱりこういうとことん自分に向き合い続ける人達の話の方がとても魅力的に感じます.
そういう意味で,とても心が振るえる講演会でした.

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