今回は,いま話題の人:作家でイラストレーターのリリー・フランキー氏です. 母親への想いを綴った「東京タワー」が大ヒットしてますね. それもあってか,会場は女性でいっぱいでした. しかし・・・というか.やっぱり・・・というか. リリー氏は,そういう女性達の期待を一生懸命に裏切るようにポツポツと話をします. まず,のっけから遅刻です(笑) 約10分遅れての開始.それから「今日の話題って何でしたっけ?」っと主催者泣かせの言葉を発して, 「ふ〜ん.家族ねぇ〜」っとちょっと困ったような顔して,始まります. 「東京タワー」が売れてしまったおかげで産まれてしまった,良い人=リリー・フランキーというイメージによって,生きづらくなってしまったといいます. 母親と二人だけの生活をしてきたリリー氏には,いわゆる“家族”というものを知らない.まわりの友人達が結婚し,子どもが生まれて家族を作ってい くけれども,彼には父親プレイをしているようにしか見えない.対して女性は母になっていく感覚を認めることができる.それでも,子どもが小学生ぐらいに なったときの主婦達の姿を,彼自身の物書きの題材として取り上げることが多い分,やっぱり母親プレイをしているようにしか見えなくなっていく. そういう姿を見るにつけ,子どもの頃に描いた大人社会というものは,ことごとく間違っていたという思いを強くする. コンビニのエロ本の前で立ち止まる大人を私たちは想像していたか? 些細なことで口論をはじめる大人の姿を子どもの頃想像していたか? 欲しい物を片っ端から買っていく大人の姿を子どもの頃の私たちは想像していたか? 現実的なものに対しては驚くほど凡庸なものしか想像できない子どもと, 全く大人らしくない大人たちで形成される家族というものは,いったい何なのか. いま,心の中を一番占めているのは,母親の死.そんなことは関係なく,世の中が自分に関わってくる中,今まで以上に普通の人の中にある変態性や狂気が気になってならない. たった一つの家族の姿しかしらない自分に,普通の家族を話すことはできない. そんな私の家族の話をするよりも,参加している方々の家族の話を聞く方がよっぽど“家族について”参考になる. ということで,リリー氏のお話は,45分ぐらいで終わり,あとは質問・・・というより会場の人と対話しながら・・・という展開になっていきました. 油断している人に,てきとーに指名して,会話を始めるリリー氏. キャンディーの企画をしているという若い個人会社社長さん. 母親と二人暮らしで,父親の姿を知らないという27才の女性. 出版社に就職が決まったばかりの24才の学生さん. これから同棲を始めようとしている29才の女性. 交際相手に認知してもらえない7才の子を抱えるシングルマザー. 母親の過剰な接触に業を煮やす38才の男性. たった6人の方々との対話の中から見えてくる驚くほど多様な家族の姿. とりとめもない会話をしているようで,意図したように“家族について”徐々にそのありようが浮かび上がってくる今回の講演会は,これまでにない不思議な雰囲気でした. 卑猥な言葉を交えたエピソードを織り交ぜたり,率直すぎる言葉で相手を困惑させたりして,笑いを誘いながらも,なんとなく家族の話に集約させてい くこういうスタイルは私は面白く感じましたが・・・,期待しながら参加していた多くの女性達はいったいどうだったのか・・・参加者達の感想がちょっと気に なる講演会でした. [前画面に戻る]
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