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   山根節:会計情報から経営を読み解く [2006年10月]
                                  -講演会聴講レポート in 慶応MCC夕学五十講
今回は慶應義塾大学の教授,山根節氏.
最近,「なぜ,あの会社は儲かるのか?」という本を出してますね.
会計関係にとても強い方です.

ということで,会計情報をつかって様々な企業の趨勢を眺めると,いまの世の中がわかるようになるということを,具体的な事例を挙げながら話をされました.

いわゆるリーダーには,2種類あるといいます.
1つは上司の居ないリーダーで,会社でいうところの経営者・社長.
もう1つは上司の居るリーダー.世の中の大多数のリーダーはこのタイプ.
この上司の居るリーダーは,ともするとどうしても会社や業界といった内部環境を見ながら様々な判断を下しがちであるという.
大切なのは,経営トップとやり合えるほどの世界観を持つこと.
そこで,必要になる能力が「情報リテラシー」であるという.

この能力を使って見つめるべき情報が,日本語や英語それに様々な文章といった自然言語で語られるものと,コンピューターの知識や設備等に関する専門知識といった機械言語で語られるもの,そして最後に会計言語で語られる情報であるという.


仰々しく語られる「会計」ではあるが,その中身は単なる収入と支出のバランスシート.
一度,見方を覚えてしまうとどんな会社の中身も見えるようになってくるのだという.
ここからトヨタ,某銀行,キャノン,武田製薬,新日鉄,NTT,武富士,楽天,ユニクロなど様々な業種の代表的な企業のバランスシートを見せながら,それぞれの業態の収益モデルすなわちビジネスモデルを山根氏は解説していきました.

そんな中で印象的だったのが,消費者金融のビジネスモデル.
いまちょうどグレーゾーン金利を巡る制度の議論がされていますね.グレーゾーン金利が廃止になったときの見通しをはっきりと語っていました.キー になるのは,消費者金融を支えるユーザーは誰なのかということ.山根氏によると,年収400万円以下の社会人・フリーターと,20代の女性が最も大きな ユーザーで,ほとんどのユーザーが生活は自転車操業ながらきっちりお金を返す人々なのだという.この層といわゆる多重債務者層は微妙に異なるため,儲けの 構造に大きな変化はないのだと.

こういう金融業界の儲けの構造に,いま多くの企業・業態が注目し,触手を伸ばし始めているという.たとえばトヨタ,ソニー,NTTなどが最近取り組んでいるものを思い出すとすぐにわかる.

なるほど,会計を通してみると世の中がよく見える.


話を聞いていて,日本というより世界経済の主流は“モノ”を売る企業より,“カネ”の流れを作る企業になっているという印象をあらためて強くしました.
これが良いか悪いかは別として,今はとにかくそんな時流.
そんな中で,私たちはどうしていくのがいいのかな?っと帰る道すがら考えてしまう,今回はそんな講演会でした.

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