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   金井壽宏:モティべーションの持論アプローチ〜やる気を高め,自己調節する〜 [2006年11月]
                                  -講演会聴講レポート in 慶応MCC夕学五十講
今回は,神戸大学大学院経営学研究科 教授の金井壽宏氏の講演です.
経営学を専門としながら,リーダーシップ論・モティベーション論といった人的マネージメントを得意とする人で「踊る大捜査線に学ぶ組織論入門」とか「働くみんなのモティベーション論」といった多数の著書のある方です.


モティベーションに関する持論をもつこと,それが大切なんです.といきなり結論から金井氏の講演が始まりました.
モティベーションが高まった経験は,どんな人でも必ず持っているもの.たとえば小学生の頃の遊びの中で,部活やスポーツを通じて,高校・大学受験 を通じて,学生時代のサークル・バイトなどを通じて.自分史の中での活き活きチャートをつくってみると自分がどこで踏ん張ったかが見えてくるハズだとい う.
そして,そこで自分に問うてみる.「なぜそこで自分は踏ん張ったのか?」そうやって自分自身のモティベーションを振り返ってみると,自分だけのモティベーション論ができあがる.
その上で,他人の動機も聞いてみる.
そうすると,人のやる気は十人十色であることを知るだろう.

やる気には3系統あると金井氏はいう.
・緊張・ズレ系
 まず何かをやり始めるときに働くモチベーション.「このままではいけない!」「あいつに負ける!」そういった危機感や他人との能力の差異を認識することによって動きだす気持ち.

・夢・目標系
 ちょっとした達成感を持ったときに,次のゴールを夢見始めるモチベーション.
 「ああなりたい」「この調子で行けばあそこまで行けるはず」「どうせやるならトップまでいきたい」と自己肯定感をもってポジティブに働きかけるもの.

・持論・自己制御系
 目指す目標を前にして落ち込んだときに,もう一度立ち直すためのモチベーション.「ここまできたのだから」「あのときの失敗に比べれば,まだ大丈夫」「ここを我慢すれば次にいけるはず」そうやってスランプを自ら意識しながらも自分なりにそれを克服しようとするもの.

これに第四の系統を加えるとすると「コミュニケーション系」が加わる.
 これは成功や努力を他人に認められること,身近な誰かに対する強い憧れによるもの,適切な時期にハッパをかけられることなどによってやる気を持続すること.基本的に他人から働きかけられるモノであるが,自分の中にある程度のモティベーションが無いと有効に機能しないもの.

若いうちはモティベーションの持論を持っているだけでいい.
だけども,大なり小なりのリーダーとなったときには,十人十色のモティベーションを理解する必要がある.そんなときに3+1系統を良く理解しておくことが大切だということを様々な人々の例で説いていた.
将棋の谷川名人,ラグビー日本代表の林敏之氏,教育心理学の市川伸一氏,シンクロナイズドスイミングの田中ウルヴェ京さんなどなど.

事例を話す中で金井氏が何度も何度も強調していたのは,「打ち込んだ経験」をもつことの大切さである.なんでもいい.とにかく,何かに没頭した経験を持つこと.
そうすれば他のことでも同じように打ち込める可能性が高い.納得感をもつことさえできれば,次のステップでも意識を上に持っていくことができる.


しかし,いつでもハイテンションでいられる人は存在しない.周りの評価も,自分のモティベーションも落ちてしまうことは必ずある.そういうときに大切なのは,やる気のアップダウンを自分で感じ取れること.落ちている時をリラックスして受け入れること.
そして,アップ状態に持って行くための自分なりの定石をもつこと.

こういう場面でも,かつての打ち込んだ経験が活きてくる.


だから,若い人はとにかく何かに打ち込んでみよう.
ある程度年配の方は,自分のモティベーション史を書いて,自論をもとう.

そういって話を締めくくりました.


金井氏はとても滑舌のなめらかで,次から次へと話が展開していきました.おかげで?用意されていたパワーポイントを大夫省略して話をしていました.
講演の構成としては,正直時間配分ダメで,喋りすぎで,まとまりがなくて,せっかくの題材が台無しになってしまっていました.それと,大学人の悪 いところだと思うのですが,聴衆も自分と同じ思考・志向を持っていることを前提にして話をしている印象がありました.だから金井氏と聴衆である私とに意識と知識のギャップがあったように思います.

ということで今回は,内容は面白かったけど,講演としてはちょっとイマイチな感じでした.

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