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   奥・井ノ上3rdメモリアルフォーラム・日本の外交戦略への提言 [2006年11月]
                                  -講演会聴講レポート in 慶応MCC夕学五十講
ちょうど3年前の11月29日に,イラクで二人の外交官が銃撃にあい亡くなりました.
亡くなられたのは奥克彦大使と井ノ上正盛書記官.二人はイラクの人道復興支援の為に外交官の枠を超え,危険を顧みずイラクで精力的に活動していました.
兼ねてからラガーマンとして交流のあった清宮氏などが彼らの意志を継いでイラクを中心とする世界の恵まれない子ども達を助ける活動を支援することを目的に,奥・井ノ上イラク子ども基金を設立し,活動を行っています.
http://www.oku-inoue-fund.com/

今回はその基金主催の討論会でした.

第一部は,イラク復興業務支援部隊として活動してきた自衛隊委員をむかえて,実際に活動してきた立場からみたイラクへの自衛隊派遣について.

第二部は,3人の有識者をむかえて,イラク戦争の意味・日本の政策の意味を振り返る討論を行いました.

第一部・第二部をとおしての司会は,フジテレビのニュースキャスター・黒岩祐治.「報道2001」で現在おなじみですね.


第一部では,イラクに最初に入ったひげの隊長で知られる第一次復興隊隊長の佐藤正久さんと,イラクからの引き上げの際に部隊を率いた最後の隊長・山中敏弘さんの2名の現役自衛官がお話をされていました.

司会の黒岩氏がジャーナリストとして鋭く二人の自衛官に「で,実際どうなの?」っと聞くのですが,なんとか交わしつつ無難に答えているなぁっという印象のまま時間が過ぎた気がします.
現役の自衛官ですから,本音というか否定的なことを言えないという背景もあるでしょう.二人は概ね今回のイラク支援は成功だったと繰り返していました.とくに他国からの評価が高かったと.

しかし,今回支援に入ったサマーワ近郊は,もともと貧困地帯でフセイン政権時代はインフラ整備がほとんどされなかった虐げられたところだった.フ セインとはほとんど縁がなかったことから戦争による破壊もほとんど無かったとか.自衛隊はそこに出向いてインフラ整備を行った.はたしてそれは「復興支 援」なのか?一番安全なところで支援することに意味はあるのか?boots on the ground.参加した印として靴を置きに行っただけなのではないか?黒岩氏はそういったところを切り口を変えながら二人に聞いていましたが,なかなか本 音(?)を引き出すことはできなかったように思います.

でも,まぁわかる気もします.自分たちがやってきたそのものではなく,自分たちを取り巻く外側の状況を,中から客観的に見ろっていうのはちょっとコクな気もしますね.立場もありますし,命がけで活動してきたことを否定されるのはツライでしょうしね.


第二部では,一転して外側の議論を行いました.
アフガニスタンでタリバン後の内乱状態で,武装解除を薦める日本政府特別代表だった伊勢崎賢治氏.日本IBM代表取締役会長で経済同友会の代表幹事である北城格太郎氏.元外交官で日本国際交流センターシニア・フェローの田中均氏.の3人が演壇に登場しました.

この第二部の議論をまとめるのはちょっと難しいです(T T)
元外務相の人間として,日本のこれまでの対応に対する肯定感の強い田中氏と,現場で奔走してきた経験から日本政府の対応に大きな不満を持っている伊勢崎氏の意見が真っ向からぶつかる形で議論が展開していました.

ただ,3人に共通していたのは・・
日本の安全保障と言うことを広く考えたとき,とくに北朝鮮の驚異を感じざるを得ない情勢下だったことを考えたとき,アメリカの行動を支持し,従った日本の政策は間違いではなかった ということ.

ただ.大変な事になって急拵えで考えた中では最善だった.という認識.
大切なのは,平時であるときタイムリミットをそう意識しないで良いときに冷静に議論を深めておかなくてはいけないということ.

こういう有事の事を考え,それにあわせて法制度などを変えようとするためには大衆の勢いが必要なんだけども,平時には大衆の意見は盛り上がらない.
盛り上がるのは切迫した緊急事態の時だけ.でも,そんなときに勢いに任せて方向を決めていたら大変なことになる.そこに,難しさがある.

とにかく普段から意識すること.なによりも当事者意識をもつことが大切である.
そう締めくくっていました.



今回は,なかなか難しいテーマで,それぞれ難しい立場の中での激しい議論だったと思います.テーマそのものも興味深かったのですが,個人的には登 場した6名のそれぞれの役所・議論の質が印象に残りました.とくに素晴らしかったのは難しい議論の流れを上手く仕切り,鋭い質問を浴びせる黒岩氏の技量. 質疑のときの仕切方なんかほんと秀逸.余分な脱線を素早く察知して,流れの向きを変えさせない.すごいですね.

今回も,いろんな意味で勉強になった討論会でした.

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