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   古川 亨:Web新時代の展望〜放送と通信のあり方〜 [2006年12月]
                                  -講演会聴講レポート in 慶応MCC夕学五十講
今回は慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ総合研究機構・教授の古川亨氏.
といってもピンと来ないでしょうね.もと日本マイクロソフト社最高技術責任者といった方が良いかも知れません.

デジタル世界を知り尽くした彼が語ったのは,放送とネットの融合について.
ん?っと思ったでしょう.ほんの1年ほど前に某えもんがしきりに言っていた言葉ですね.
でも,古川氏の視点はちょっと違います.TVとネットといった個別の融合の話ではありません.もっと広い世界・デジタルメディア産業の流れについての話でした.


たとえば,とあるメーカーが発売している電話.
その電話で遠くの知人を呼び出すとき,その部屋にLAN回線を見つけると,自動的にネットにつないでIP電話として機能します.同じ市内に住む家 族を呼び出すときは,普通の電話回線で電話をつなぎます.その電話を屋外にもっていき,自宅の違う電話機(子機)を呼び出そうと思えば,近くの無線LAN 回線を探し出して内線として呼び出します.
それらすべての切り替えをたった一つの端末で,自動でやってしまう.


たとえばこんなデジカメの話.
 無線LAN機能をもったそのデジカメをもった家族.休日のアミューズメントパークでたくさんの写真を撮る.いずれメモリがいっぱいになってしま う.するとパーク内の無線LAN回線につないで,撮りためた写真データを一時的に保管させ,引き続いて写真を撮れるようにしてしまう.送った写真データを 自宅へ転送したり,その場で編集して紙にしたりといったこともできる.
 子どもの写真を撮るとき,無線LANを通じてカメラの画面に現れたあるメニューを選択すると,子どもの横にアミューズメントパークのキャラクターが映し出されあたかもいっしょに写真を撮ったかのように写る.
 ウォータースライダーに家族で乗る.ライドが落下する瞬間を場内のカメラが撮影している.ライドが停止した後,出口付近でその写真が展示されている.その家族が写った写真の番号を告げ,お金を払うと,その家族がもっているデジカメの中にその写真が移される.

これが本当の意味でのデジタルメディアの世界.すでに幾つかはすでに世に出ている.

他にもたくさんのアイデアが示されました.
家庭内AVネットワーク,インテルViiV技術,マイクロソフトMSTV技術,アップルのiTVシステム,STBのエディ通信,六本木ヒルズやエ リッククラプトンのライブに見られるIT技術の数々.どれも夢のような技術で,しかも一部ではあるもののすでにサービスが提供されているからすごい.
こういったものを古川氏は興奮しながら,その熱気と共に一つ一つを披露していく.

そんな中ときおり,憤る様子を古川氏が見せるのが印象的でした.
技術が進み,様々な可能性が広がるなかにあって,それを利用するコミュニティーが追いついていない様子に,とくに憤っていました.
いま盛んに宣伝されている「地デジ」.技術的なボトルネックを抱えたまま,多額の資金をつぎ込んで国を挙げての大号令されている現状は,とても危ないと釘を刺します.
他にも,顧客を囲い込もうとするTV製造メーカーの「テレビポーターサイト」コミュニティの姑息さにもうんざりしている様子でした.このテレビポーターサイト構想の問題はいずれ表面化してくるとのこと.


でも,海外に目を転じると,CBSやBBSは自社の看板から「放送」という文字をおろして,「メディアコンテンツ」会社へと衣替えを始めている. 新しいコミュニティーのあり方を積極的に模索しているのだという.それに比べていまだに「放送」に固執している日本の大手コミュニティ.その差は歴然とし ている.そろそろメディア戦略の方向性を修正しなければ道は開けないと嘆いて,話を締めくくっていました.


今回は,講演と言うよりもいま世の中に出ているデジタル新技術の紹介をうけたという印象でした.でも,その技術を活かすも殺すも,それを利用する人間側のあり方・コミュニティーのあり方によるということが透けて見えたような気がします.

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