今回は,リクルート・ワークス研究所所長の大久保幸夫氏のお話です.キャリア論を得意とする方で,著書もたくさんあります. 「キャリア」という言葉には大きく二つの意味があるといいます. ・これまでに経験した職業・職務の履歴を示す 客観的側面 ・仕事に対する自己イメージを示す 主観的側面 今回の講演では,二つ目の自己イメージとしてのキャリアについての話でした. 節目において自己イメージの形成につながる問いかけをすることをキャリアデザインといいます. ・自分にできることは何か? ・自分は何をやることに価値を感じるのか? ・自分は何がやりたいのか? それぞれの年齢段階において,こういう問いかけを自分にすることで身につけるべき能力の開発を行うことができるといいます. 研究によると,人は5〜8年で関わっている仕事に対する適正判断をし,約10年携わることで一人前になり,約20年でその仕事において最高の業績をあげる傾向にあるそうです.その後は緩やかに落ちていく. だから社会人になってから,20年サイクルで自己イメージを考えるといい. そうすると80歳までに3つのキャリアを形成することができるといいます. 最初の20年は筏下りの時代. とにかく当面の目標に向かってがむしゃらに取り組むとき. その中で自分自身の適正を見極めていく. 次の20年は山登りの時代. 自分の進む道=自分の専門を一つに絞り,その頂上を目指すとき. 一流のプロになるべく全エネルギーを集中させる. しかし難しいのが自分が登る山を決める過程. 自分の適正と世界における山の高さをきちんと見極められれば大成できる. でもそれを誤ると何者にもなれない厳しい現実. ちょうど40歳ぐらいに遭遇するこのフェーズをキャリアの中年期問題というらしい. このフェーズをうまく乗り切れるかどうかは20年間の筏下りをきちんとこなすことができたかどうかにかかってくるという. 以下のチェック項目を確認してみるといい. 「対人能力」 □相手の問いかけに対するリアクションがきちんとできる □短時間で人を引きつける愛嬌がある □人の話を最後まで聞くことができる □相手の意図をきちんと読み取ることができる □自分の得意な仕事を他人に任せることができる □他人をほめることができる. 「対自己能力」 □自分なりのストレス発散法を持っている. □どちらかというと楽観的 □どんなことでも何かを学びとろうとする姿勢 □つまらない仕事に対しても自分のやる気をあげることができる □生活リズムの確立 □適度な自信 「対課題能力」 □自分なりの情報収集ルーチンを持っている □自分なりの定点観測点をもっている □得意な思考スタイルを持っている □深く考える習慣がついている □仮説を立て,検証する能力を持っている □自分なりのシナリオを作ることができる 以上の項目が半分以上クリアできれば,まずまず. あとは目指すべき山を見極める時. そうしてプロフェッショナルをめざしていく. プロを目指すことによって,多くのメリットがうまれるのだという. 中年期の成長を促進させ,さらなるキャリアの可能性を広げ,それによって職業寿命が長くなる. また社会性が自然とはぐくまれ,組織との健全な距離を保てるようになるのだと. その道のプロになる.それは自分の仕事が天職になることであり,そうなることで今までの自分の経験がすべて報われる.また収入,出世,地位,学歴,資格などの一般的な基準が無意味なものとなり,豊かな人生を送ることができる. そうなるためにキャリアデザインをしていこう.そう結んで大久保氏は話を終えました. 非常に話の構成がうまくまとまっていてとても聞きやすい講演でした. また,ときおりジョークが盛り込まれていて,適度に緊張をほぐされました. 大久保氏はまさしく講演のプロであったかと思います. 今回,大久保氏に質問させていただいた中に,学生さんたちに役に立つだろうものがありましたので,紹介しておきます. 就職活動なんかで,自分が何をしたいのか?わからないとき・・ 「自分はどんな人生に価値を感じるのか?」 この問いを自分にしてほしい.人を育てること,お金を稼ぐこと,いい商品を開発することetc・・・この問いに対する答えは,どんな人でも持っているはず.それを糸口に世の中を見てみるときっと筏下りのスタートを切ることができるはず.とのこと. どうですか?自分なりの答え・・でてきましたか? 関連書籍等 [前画面に戻る]
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