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   地域の水環境の悪化(主として河川の汚濁)の主要な汚濁源と考えられるもの [1997年]

 

  近年、人間活動による水環境の改変は著しく進行しており、それは河川や水路の水質の汚染、流出量の変化、水辺の景観の変化などに現れている。

 とくに河川等の汚濁はひどく、1994 年度の環境白書によれば、全国の河川・湖沼の水質は、現在では横這いの傾向にあることが示されているが、これらの水域の水質汚濁の主な原因は、やはり生活排水が中心になってきている。COD について、霞ヶ浦と手賀沼に流入する汚濁負荷量の発生源別割合を見ると、霞ヶ浦では全体の44% 、都市化の進んだ手賀沼では実に76% が生活排水に起因するものとなっている。

 河川の汚濁は河川に流入する汚濁物質によって直接的に引き起こされることが多く、初期には足尾銅山の例のように鉱山からの排水による重金属汚染があり、ついで工場排水による汚染があった。近年ではこれらに変わって都市下水による汚濁が主になっており、もっぱら有機物を主とした汚染である。河川には自浄作用があるが、それを超えた汚濁物質の流入があると、河川の水質は回復せず、高いBOD 値をしめし、水中の溶存酸素は低下する。このように汚濁した河川では、汚濁源の排出が人為的な時刻変動を示すので、河川の水質も時刻により変化する。下水による汚濁河川では、午前中と夕方から夜中にかけての2度、水質濃度は上昇する。また工場排水による汚濁では、その排水量の変化に対応して水質は変動する。更に農業用水が流入する河川では農業用水の水質と水量によって大きく水質が変動する。また降雨の後の増水時には水質が変化するなど、河川の水質はいろいろの原因によって変動する。

 汚濁物質の発生源としては、自然的発生源と人為的発生源があり、人為的発生源には、鉱山、工業、都市、農業などがある。鉱山の排水の中にはその鉱山の種類に応じて銅、鉄、亜鉛のような金属が含まれており、懸濁物質も多い。硫黄鉱山の場合には硫酸が多く、水素イオン濃度PH が低い。カドミウムの流出による水稲の汚染被害が大きな問題となったこともある。

 工業活動では、その業種によって排水の水質が変わるが、大きな工場や工業団地からの排水量は多いので、廃水処理が不適切であると、排水先の河川や湖、海などの水質を汚濁する。静岡県田子の浦での製紙工場排水によるヘドロ汚染、有明海の化学工場による水銀汚染が近年の例である。金属工業やメッキ業からも有害な金属やシアンが排出されやすいので、きちんとした処理が必要である。また土木工事に伴って汚濁が流出することがあるので注意も必要である。

 都市下水の中には大量の有機物や窒素・リンが含まれている。農業排水からは肥料中の窒素・リンと農薬が流出し、畜産業からは糞尿のなかの有機物や窒素・リンが流出する。

 飲料水中に含まれる微量汚染物質の発ガン性について関心が高まっているが、1974 年にニューヨーク市の水道水中からトリハロメタンが検出され、動物実験でそのうちのクロロホルムに高い発癌性があることが確認されたことがことの始まりである。そして1980 年代のはじめには、カリフォルニア州の通称シリコンバレーでトリクロロエチレンなどの有機塩素系溶剤による地下水汚染が明らかになり、その汚染された地下水が水道用水に用いられていたことから大きな社会問題に発展した。シリコンバレーで起きた地下水汚染は世界に波紋を広げ、我が国でも1982 年に全国の主要都市で環境庁による大規模な地下水汚染が行われた。その結果、種々の微量有害化学物質による地下水汚染が全国至る所で発生していることが判明し、その後の水質汚濁防止法などの一連の関連法改正の契機となった。我が国では飲料水の安全性を確保するため、厚生省が水道水の水質基準に関する省令を交布している。


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