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   水環境の評価としての生物指標について [1997年]

 水辺における多様な環境条件の存在は、多様で豊富な植物・動物の存在を可能にし、豊かで安定した生態系の形成と保全の場を提供する。こうした水辺環境が生物の生息の場としてどんな環境条件を整えているか、さらに生物にとっての望ましい水辺環境条件はどのようなものかについて、水辺の生物相を調べることによって情報を得ることができる。
 川には、バクテリア、藻類、底生動物、魚類など多種多様な生物が生息している。それらの生物はそれぞれ種類によって溶存酸素の要求量、アンモニア・有機酸・硫化水素などの有毒物質に対する抵抗力が違うため、川の各部分には水質によって異なった種類がすみつくようになる。
 このように有機汚泥による川の環境の変化は、その水域に生息する生物相に繁栄されるので、逆に生物相を調べることによりその水域の水質の状況をうかがい知ることができる。
 このような水環境指標としての生物指標は、理化学的水質判定に比較して次のような特性にまとめられよう。 

@生物指標では指標媒体が生物であるから、環境の劣化が水中の生物や人間に与える影響をより直接知ることができる。

A一定期間、その環境の中で生活してきた生物あるいは生物群集を指標とするので、時間的に点ではなく、調査時点までのかなり長期間の水質を反映したものとなる。

B環境を構成する個々の物理・化学的要因が生物に対して及ぼす総合的、あるいは複合的な影響を知ることができる。このため、通常理化学的水質監視の対象とならないような物質等の異常を察知できる可能性がある。

C生物分類の知識があれば評価することができ、理化学的指標に比べて高価な機器等を必要としない。

D指標生物の体系を単純化することにより、生物分類についての専門的知識の必要性を大幅に減らすことができ、適切な指導者のもと、小・中学生や一般市民にも調査・評価が行えるようになる。また地域住民の参加の過程を通して水質浄化や河川愛護に対する意識の啓発に視するところが大きい。さらに生物指標は環境の総合的な指標であるばかりでなく、その結果が視覚を通して直接一般市民に訴える力を持っている点も、優れた特徴と見ることができる。


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