赤外線モジュールとプリンター端子を
利用した自動計測

目的

  windowsになってからI/O制御の制限などが増えたことから、
外部からのデータをコンピューターに取りこむことが難しくなりコンピュータ
計測がやりにくくなっていた。windowsマシ―としては音声入力だけは
可能であるが、その他の外部信号を取りこむことはかなり困難となっている。
このようなコンピュタ―の現状の中でもコンピュタ―による自動計測もたらす
教育的に大きな効果を考え、下記のような研究を行った。

@、赤外線リモコン装置に目をつけI/Oポートとしての利用を研究した。
赤外線リモコンの受光部と、
プリンター端子と接続することでパソコンでの
自動計測が可能となることからコンピューターに信
号を取りこむ装置の開発
した。(赤外線受光装置の開発)

A、この計測方法を有効に利用した実験器具の開発(赤外線発信装置の開発)
 a)速度の計測用実験器具の開発
 b)速度測定から速度計測の自動計算していく方法(ソフト開発)
 c)パルスカウント
   放射線計測への応用としてGM管の計数をカウントする装置を開発

 以上のようなことができるような実験器具の開発を行うこととした

B、 A・Bを利用した授業カリキュラムへの取り組みを行った
a)等速度・等加速度運動を理解させていくための授業
速度・加速を
測定することで力学分野でさまざまな使用が可能となる。

b)動摩擦係数を求めるための授業
可動性やコードによる運動の妨げなどがないことから動摩擦係数を求め
る実験も可能となる

c)放射線計測を授業に取り込む方法
特徴

 @赤外線発信部分より各種計測データを発信し、赤外線受光部分で
このデータを受け取る
ことにしたことで、計測機械とコンピュータを
完全に分離して使用することが可能とな
った。この方法により下記の
点で優れたものとなった。

a、可動性が良くなることで利用範囲が広がった
b、計測器に高圧電源を使うGM管計測などの装置やI/Oからコン
ピューターへの
電流漏れなどによるコンピューターのハード面への影
響がなくなっている。

c、速度測定を行う場合にコンピューターとの接続コードを気にする
ことなく,自由
度の高い計測が可能となる。
Aインターフェースの入り口にプリンターの出力端子
(セントロニックス基準)を使用し
たことや言語にVisual C++を
使ったことでwindows環境で使用してい
るすべての機器で共通して利
用できるようになった。

B計測部分に速度計測とカウンターの機能を加えることで一つの装置で、物
理分野での
幅広い利用が可能となった。
C装置は大変簡単な構造であることから簡単で格安に作れることから生徒実
験用に複数
作成することも可能となる

 内容

1、赤外線を利用したパソコン自動計測の実験装置の基本原理
下記の行程を経る事で、速度やパルスカウント数をパソコンに取り込むこ
とにした。

@、速度やカウンターなどの物理量をTTLレベルの信号に変換する。
A、@の信号を赤外線受光装置の基本振動数(キャリヤ信号)の振動を
加えた信号に変換する。
B、Aの信号で赤外線LEDを点灯させ、赤外線発信部とする。
C、赤外線受光装置を使って、発信部からの信号を受け取り、ICを用
いてTTLに置きかえる。
D、Cの信号をセントロニクス基準となっているプリンターのジビー信
号端子に入力する。

E、言語ソフトVisual C++でプリンター端子のビジー信号を
読み取り物理量に変換する。

<速度測定を行うための方法として次のような装置を作成した。>
@模型用のプーリーを台車の進行と共に回転するように設置する
Aプーリーには等間隔で穴が開いているのでプーリーを挟んで
LEDとフォトトランジスター
(TPS601)を取り付けることで、
台車が動く際にプーリーの穴が通過して行くごとに
オン・オフの信号が
発生するようにする。
Bこの信号を74LS04に通してAの信号をTTL信号に変換する。
CBの信号を使ってフォトスイッチ(TLP512)のオン、オフでき
るようした
使用したプーリーを写真2に示す(等間隔の穴以外はふさいでいる)。
プーリーをセットした写真を写
真3に掲載した。

写真2 使用したプーリー

写真3 発光部装置の全景      

この装置でパルスカウントをさせるためにスイッチでピン端子入力が可能と
なるように
してある。
<キャリア信号発生部(図3の2の部分)>
回路の2の部分がキャリア発生部となっている。使用しているICは
555を用いている。
 38KHz信号を発生させためにR1は10KΩ
、R2は2KΩと半固定抵抗1MΩ、C1は0.0
1μFを使用してい
る。この回路で38KHzのキャリア信号が作り出せる。555の出力
部分3
ピンに赤外線LED(GL538)を取りつけキャリヤ信号を赤外
線信号にしている。赤外線発光部分
を写真に示す。555は図3の1の
部分(速度やパルスをTTLに変換する部分)からのTTL信号がHとな
ってい
る間、起動するようにセットされている。この結果、図3の1の部
分からTTLレベルでH信号が入力された間、38kHzの赤外線キャリヤ
信号が発生することになる。
光部の写真を写真5に示す。また赤外線LE
Dの発光の様子を写真6に示す。

図3、発光部の回路

555のR1,R2,C1

の関係式は下記のように

なっている。

 発信振動数(f)  
f=1.44/C1×(R1+2×R2

 本回路では38KHzで使用している。   

真4 本体の写真

この装置はスイッチ回路部分(図3の1の部分)である。

写真5、発光部

555を使った発光部分の写真である。(図3の2の部分)

 

写真6  赤外線発光部発光部の周囲にはフィルミラーを張り赤外線の各拡散を防止している。この方法を取ると受光の能率が上がる。

写真4は本装置のスイッチ部の写真であり、3つの電池を使用している。
@単三2本(3v)スイッチ回路部分(図3の1の部分)
A74LS04の電源用9v積層電池
B単三2本(3v)555の発光部分(図3の2の部分)
これは各回路での電圧低下を考慮して制作した結果、このようになった。

3、赤外線受光装置について

@赤外線受光型プリンターインターフェース
赤外線リモコンの受光部分に使用されている赤外線モジュールは、基本振動
数(キャリア信号)の赤
外線の矩形波信号を一定の長さ以上連続して受け取
るとTTLレベルでHの信号を発生するように設
計されている。そこで、赤
外線発信部から一定間隔の規定振動数赤外線を発生した際に、この信号を
1
の信号として 認識する装置を開発することにした。今回使用した赤外線受
光モジュールは
CRVP1738というものでキャリア信号が38KHzで作動する
モジュールである。
赤外線受光モジュールを利用してキャリア信号を含む赤外線信号を受光し、
この信号をパソコンの
プリンター端子に取りこむために74LS04OR回路2
を通して信号をTTLレベルに変換した
 そのための回路を図2に、実際に
作ったインターフェースを写真1に示す。

図2、赤外線受光用回路図   

写真1、赤外線受光型プリンターインタフェース

 写真にあるスイッチは赤外線の信号がTTLに変換されたかを確認する
ためのもので、モジュールか
らの信号や赤外線が届いているを確認するた
めに設置してある。使用時にはOFF押してある。
A受光感度を上げるための工夫
赤外線受光モジュールをプリント基板に差して使用しているだけでは、赤外
線発信部の移動などの
ぶれにより受光が不安定となり正しい計測ができなか
ったことから、受光モジュールの周囲にフィル
ミラーを設置することにした。
レーザーポインターを用いて理想的な形状を考えた。
また設定した様子を写真
7に示す。

写真7フィルミラーを使った受光部分

 4、パソコンでの計測
プリンター端子を通してコンピュータでの計測をします。方法は下記の通
りである。

@C言語を使ってI/Oの378(16進数)範囲の
信号を読み取ります。
Aビジー信号が入力されると信号データ―
Hは32516 Lは65284 
  *この信号はパソコンによってことなるディバイスマネージャーで
  パソコンのプリンターポート番号を確認して信号確認をしてください 
という信号が発生する。この信号をI/Oの読み取り命令(Visual 
C++では_inpw)で読み取る。
B速度測定ではHの信号が入力される時間を計測し、パルスカウントをする
時にはHになとなっている単位時間あたり
の数を数えることにした。計測し
ている画面を写真8に示す

 <測定方法>

 1)装置の設置と計測について

@写真9のように発光部を力学台車に接続する
台車との接続には磁石を使用した。スイッチ部を進行方向に設置し、後方に
赤外線発光部を設置するように配置する。
A発光部の位置に合わせてプリンター端子に

接続した受光部を設置する。 *計測可能な距離は発光部と受光部の距離が
約1mであることを考慮して
設置する。
Bパソコンの速度計測ソフトを起動する。

 2)速度計測の方法 

@装置の設置・測定にしたがって装置を接続する。写真10参照
Aコンピュータープログラムを起動し、力学台車を軽く押しデータ―の記録
をする。速度
測定の結果を表1に示す。その際のv−tグラフを表2に示す
写真10 本装置とコンピューターを設置した状態の写真

表1 等速運動の測定結果  

時間  (秒)

速度m/s

時間 (秒)

速度 m/s

0.36

0.98

0.57

0.91

0.41

1.00

0.62

0.92

0.45

0.97

0.71

0.89

0.49

0.97

0.75

0.91

0.53

0.93

0.80

0.88

1m程度の運動においてはほとんど等速運動となっていることがわかる。
打点タイマー
による実験などと比較しても大変良い結果が得られているこ
とがわかる。
2)、パルス計測のとしてのGM管の自動計測方法(半減期を求める方法)
事前準備 放射線源の確保(大気中のラドン222の収集)
ゴム風船を膨らめて風船を紙や布でこすり帯電させておき、人の出入りのな
い場所に放置しておくトイレットペーパーの芯などを利用して10cm程度
の高さ1時間ほど放置する。使用する場合には風船を割って使用する。
@本装置の赤外線発信部のピン入力端子にGM管からのON/OFF信号を
接続

A1分ごとのパルスの数を計測する。40分から50分の計測結果から時間
とカウント数のグラフ
を書く。結果を表3に記す。  


表3 222Rn半減期計測
高圧を利用するGM管計測についても安心して使用でき、
半減期もしっかりと出てくることから大変良い結果が得ら
れた

授業での実践事例

1、等速運動の授業での使用実践

   生徒たちは力学台車を一定の速度で動かしたとき、速度が減少し
てしまうとの考えを持ちやすい
ことから、今回作成した実験装置を用い
て台車を動かし等速運動の速度を計測する演示実験を行
った。実験方法
は内容の実験例で記載した方法をとった。
生徒たちには演示実験で取っ
たデータ記録をつかったv−tグラフを作成させ、その結果から
どのよ
うな運動であったかを考えさせた。
実験を取り入れた成果
実験装置自体の摩擦が少ないことや、パソコンとの信号をやり取りする
ケーブルなどがないなど
からほぼ等速運動をしている状態を記録するこ
とができた。これにより生徒の間違った考えを
正しながら授業を進める
ことができた。
2、等加速運動の測定の実践例
目的
坂道に向かって一定の速さで押し出された物体
の運動における加速度は
常に一定(等加速運動)
であることを説明することを目的とした。
方法 
@写真
11のように力学台車を坂道の上に置く
A速度計測ソフトを起動して、台車を坂道に沿って押し動かす
Bv−tグラフとから加速度を求めさせる
グラフがV字型になるが、実際には坂道を降りてくる状態であることから
実際には−方向に記載
することになることを理解させて、グラフに追加さ
せて記載させると表に示すようにまったく直線
となることがわかる。
成果
この実験から坂道に向かって押し上げられた台車が途中から運動を変えて
しまうように見える現象
が等加速度運動であることを理解させることがで
きた。
3、動摩擦係数測定の実践例
目的
摩擦のある床の上での物体の運動を表す方程式
ma=−μ’mg  (μ’は動摩擦係数)
より質量に関係なく一定の加速度となることを確認する。
また動摩擦係数を求める。
 方法 
@速度測定と同様に装置を設置する。

A図のように一定の粒の大きさで作られたサンドペーパーを台車のタイヤ前
に60cmほど長さで敷く。写真12参照

B速度測定ソフトを起動し一定の速度で質量1kgの台車を押し速度変化を
計測し、加速度を求める。

C質量1・5kgの台車に0.5kg、1.0kgの各おもりを乗せてBの
測定を行う
D各測定より加速度を求め比較する。表6に示す
E動摩擦係数を求める   

6 動摩擦による加速度と動摩擦係数の結果 

台車質量 Kg

加速度     m/s2 

動摩擦係数

1.5

−0.23

0.023

2.0

−0.21

0.021

2.5

−0.23

0.023

平均

−0.22

0.022

成果 
動摩擦摩擦による加速度が一定であることを実験から説明することは
大変難しいことであ
るが、本実験では手軽に結果をえることができた。
また、動摩擦係数も求めることが可能となた。

4、その他の利用
 上記の計測が本実験装置の特徴を利用した実験であったが、その他授
業で利用した実験を下記に示す。 
@プーリーを滑車として利用したアットウッド実験より重力加速度を求
める実験
A重力加速度の測定(プーリーを等間隔のシールを貼ったOHPシート
し取り替えた落下実験)

B放射線の単元で放射線の半減期に関しての実験(実験例に記載)
教育指導における教育上の効果

 @等加速運動などの計測を手軽に行うことができるようになることで力
学分野の授業にインパクト
のある授業展開かできた。そのことにより単調にな
りやすい力学の授業に変化を与えると共に理解度の向上につながった。
 A計測器とパソコンの間にケーブルがないことから自由な計測が可能となる。こ
の結果、いろいろな場面で本装置を取り入れることが可能となった。
 B放射線を授業に取り上げるためにGM管計測は欠かせないものである。この計
測を安全に自動化で計測することで大変気軽に実験することが可能となり、理解度
も高まった
 CWINDOWSマシーンでは不可能ではないかと考えていたパソコン計測が安全
で手軽に行うことができるよになったことで、データなどをその場で取り出して授業に
使えるようになった。これは生徒に興味を引くことができた。まあ、求めたデータを加
工したりする作業なしに授業に直接利用していくことが可能となり、教えようとする内
容を離れることなく進行することが可能となった。
 D装置の単価が安いことやプリンターインターフェースを使ったことで機種依存もな
く格安で測定装置を作ることができることから生徒実験にも適している

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