簡易霧箱の作成

                          1998/1/31 立花学園高校 久保田 信夫


1、はじめに 
   原子力実験セミナーに参加したとき作成した簡易型霧箱
   キットを元に身近な材料で同型の霧箱を作成してみるこ
   とにしました。
   この霧箱ではα線の軌跡を観察することができます。

2、霧箱の原理
  密封された容器の中にエチールアルコールを入れ底をドライアイスで冷や
  します。エチールアルコールの沸点は78.3℃であり、常温でもある程度蒸
  発していますので容器内にはエチールアルコールの気体が充満することに
  なります。
   エチールアルコールの融点が-114.5℃であることから下側ではドライア
  イスの温度が-78.5℃であるために気体状態と液体状態の中間の飽和状態
  の部分ができあがります。
   この場所にアルファー線等が飛び込むとアルファー線が衝突してできる
  イオンを核にして水滴ができます。
   この水滴はアルファー線の通過した後にできるのでアルファー線の軌跡が
  細い線上の雲のように見えることになります。
  ジェット機の通過後に見られる飛行機雲と同じ原理です。

3、今回の材料について

 @ 容器(底が透明で文字の少ないものなら良い)半径10cm程度 
     *今回はマリスのシール容器(丸型)を利用します。底が透明のプラス
      チック容器であれば利用できます。マリス製品の値段1個約200円
      6個セットで販売しています。
      (製品名 シール容器 丸型SV−9)

 A カラーアルミ板(厚さ0.3mmで裏が黒のものを利用)20cmx20cm
      アルミ板(0.3mm)の物に黒い紙や布を張ったりしたものでも良い
      1枚130円

 B すき間テープ(幅約1cm、長さ30cm)
       長さ5m、幅1cm 約200円

 C 針金(30cm)

 D アルミテープ(幅2cm、長さ40cm)
                     長さ4m、幅4cm 約450円
                    *幅を1/2にして利用しています 
 E スポイト

 F エタノール(少量)

 G ドライアイス 10cm×10cm×5cm
   1Kg=500円

 Hゴム栓 #0 (12×10.5×12mm)
                        約150円

「線源」

  
  閃ウラン岩(試験管入り) ウラン鉱石3600円
  
 (その他紹介)
 ランタン用マントル (メーカー キャンピングガス)
   マントルを注射器に入れて1時間ほど置いておくと
   ラドン220が蓄積します。これを霧箱に入れると、半
   減期が1分程度なので半減期の観察に適しています。 
    *マントルでも放射線をださないものもあり
      ます。測定器を持って確認しながら購入
      することをお勧めします。

   大気中のラドン  
       (締め切ってある場所で黒板消しクリーナーの蓋を
        あけ目の細かい金網を入れ、ろ紙を置いて2時間
        ほど吸引する)
3、作成方法

 (準備として容器の開け口から高さ2cm程度の所に直径1cmの穴を開け 
  ておく。*ケースが壊れ安いので半田コテで穴を開け、リーマーで広げ
  る方法が良い)

 @ 容器の開け口を下にしてアルミ板の上に載せ、鉛筆やマジックなどで容器の
    外側の大きさに沿った線を書く
 
 Aはさみでアルミ板を@の線に沿ってきり円盤状にする。

 Bすき間パットを容器の内側に合う長さで切り、容器の底の側面に沿って張る

 C針金でBを押さえるように取り付ける

 Dアルミの板を開け口に取り付ける。(容器側が黒い面になるようにする)
  アルミのテープで密封状態を保てるようにする。  

4、観察方法

  @エタノールをスポイトに取り、容器のアルミ板を張った方を上にして置き
    穴からすき間テープに染み込ませるようにして注入する
    (多めに入れるのがポイント)

  A机にガーゼなどの布を引きドライアイスを平らに置く。

  Bその上にアルミ板を下にした容器を置く。5分程度放置する
   (アルミ板が濡れたような状態になったら観察が可能となる)
   *いつまでも湿ってこないときはエチールアルコールが不足している
    とも思われますのでアルコールを追加してください。

  C線源を差し込み、容器に横から懐中電灯の光を当てる。       
     *見えないようなら懐中電灯の角度を変えて観察してください。

  D観察終了後は栓を開けて中のアルコールを追い出すようにしてください
     アルコールの入ったままで保存しておくと、容器が不透明になって観察   
     しにくくなります。

「授業での観察風景」1998/1/23実施
 物理の授業の原子の所で導入して実験です。
 放射線実験キットとはかるくんを使った実験とあわせて実施しました


 アルコールを入れセットして、ドライアイスに上に置いた所です。

明かりを消して観察開始です。

フラッシュで観察中を撮影してみました。ライトをいろいろな角度
からあてて観察します。
  

5、作成上のポイント
  @アルミ板の底が密閉されていること。
    観察中に容器内で対流が起こっている場合にはアルミテープの張り直し
    が必要です。

  Aアルミ板を容器の縁に合わせて切る。
    大きいと密閉できませんし、小さいと容器内に落ちてしまいます。

  Bアルコールはメタノールを使わない
   メタノールは毒性があるため使用しない

  Cその他
   1,この容器は長期使用するとアルコールに溶けて見にくくなるので
     同様な材料を利用して再度作成することをお勧めします。  

 (使用する容器の条件)
  底に文字が書かれていない。透明であること。
  高さが5cmから10cm程度であること。
 (浅すぎたり深すぎたりでは飽和層が出来にくい)

2,軌跡を鮮明にするためには直流100Vから500Vの電圧を底のアル
    ミ板と上側の針金の間にかけてください。ベーター線の観察も可能とな
    ります。ただし密封状態が崩れないように小さな穴を開け導線を通した
    後、接着剤などで穴をしっかりとふさぐ必要があります。
    電極については上下どちらを正にしてもかまいませんが正の電極には1
    00KΩから1MΩの抵抗を付けてください。
    電源としては真空管電源装置や写真のフラッシュ用電池(安売り店で
    250Vから510Vの物が4000円程度の値段)などがあります。
   *現行より大きな装置を作成される場合には必ず電圧をかけること
    をお勧めします。


ちょっと大きめの容器に入れて200vの電圧をかけて
いるところです。電圧を発生しているのは真空管電源
装置です。
 容器内の針金に正、下のアルミ板に負の電圧をかけ
ています。
 ベータ線も観察できました。
  *ウラン鉱石をアルミ箔で包むとアルファー線が透過
   出来ないのでベーター線だけが観察できます。 

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