「Life Science」のガイドライン2021年12月6日
第2章の中から抜粋、
|
細胞の中に広がるのは、人間が生きる「社会」に似ています。
高校生物の教科書などで、細胞の中を覗いてみたことありますか?
細胞の中には小さな器官がたくさん集まって働いている社会があるのです。
1)細胞小器官には、「工場」や「発電所」や「病院」などの施設があります。*補足(1) 2)そこには働く人が存在します。 人間の社会では「人」が主役ですが、細胞の中では「タンパク質」が主役です。人がさまざまな職業につくように、タンパク質もそれぞれが専門職人で、数万種類があります。*補足(2) 3)タンパク質の職業は誰が決めているのでしょうか? 細胞の中には、箱に入って大事に守られている巻物があります。この巻物をDNAと言いますが、たくさんの遺伝子の情報が書き込まれていて、遺伝子がタンパク質の職業を決めているのです。*補足(3) 4)また社会にとって「物流」が必要です。 細胞の社会にも交通網が張り巡らされていて、タンパク質や物資が往来し物流がコントロールされています。電車やバスや車に相当するのが「膜」でできた風船のような物で、細胞自体、 細胞小器官など、何でも膜で包まれています。膜はシャボン玉のように変幻自在に形を変えて、二つに分離したり、二つが融合したりします。 小さな膜の袋の中に物資を入れて、荷札をつけて目的地まで流れていくのです。*補足(4) |
補足説明
*補足(1):細胞小器官の総称を「オルガネラ」と呼びます。「ミトコンドリア」もオルガネラの一つで発電所の役割を担っています。 *補足(2):タンパク質には専門職につく働きをもつものと、細胞内の組織の建築材料となるものがあります。 *補足(3):人には「37兆個の細胞」があります。どの細胞も同じDNAで、およそ「2万数千個の遺伝子」を持っています。そして遺伝子にはタンパク質の設計図が書かれているのです。 *補足(4): タンパク質は「アミノ酸」を部品として構成されますが、膜は「脂質」いわゆるコレステロールで構成されています。嫌われ者コレステロールも細胞には必要な材料ですね。 |
考えてみれば、人が作った機械や装置は歳月がたてば壊れる。人間も歳月がたてば老化しますね。
「でも安心!」 機械とちがい、人の体を構成する細胞は常時メンテナンスされていて、古い細胞は死んで新しい細胞に置き換わったりします。 例えば、爪だとか皮膚、内臓、骨さえも数日で新しい細胞に置き換わるという。 「でも、油断禁物!」 細胞が新しく作られない内臓や組織もありますよ。 例えば、心臓や脳など。心筋細胞が老化するとやがて心不全になり、神経細胞が老化するとやがて認知症になる。つまり心臓や脳の細胞などは古くなると寿命が縮まるのです。 「でも、怖がるべからず!」 細胞が古くならないように、細胞の中味をリフォームする助っ人がいるのです。 「オートファジー」というリフォーム業者が現れて、細胞内の壊れかかった小器官を新してくれるのです。 それで、細胞は老化せずに生き残ることが出来きるのです。 | ||
では「オートファジー」って何?少し勉強しましょう。
オートファジーは細胞の中に現れるリサイクル業者で、
月光仮面のように「はやてのように現れて、はやてのように消えていく♪」
オートファジーは細胞の中で、袋のような形で現れて、細胞の中にいるまわりの小器官(ミトコンドリアとか、タンパク質製造器、輸送器、など)を包み込んで、風船のように膨らみ消化物質を出してバラバラに分解してしまいます。 分解されたものは最小単位のアミノ酸になり、新たな小器官の建築材料として再利用されます。
リフォーム業者がサボると、細胞はどんどん老化して行きます。 だから老化を遅らせるためにオートファジーを活性化する方法を知っておく必要があるというわけ。 日本人の大隅博士が「オートファジーの研究でノーベル賞」を授かったことで研究が加速して、オートファジーを活性化するタンパク質が次々と発見されてきています。*補足 | ||
補足説明
大隅博士が 14個の活性化するタンパク質を発見して、現在までに世界中で 30個以上が見つかっています。日常にどんな食材を摂れば良いか、については第5章で取り上げます。 |
オートファジーを活性化するタンパク質の発見は朗報なのですが、残念ながら、活性化をストップするタンパク質があることが発見されています。これが 「ルビコン」で、老化を促進する原因の一つになっています。
実は、このタンパク質「ルビコン」を生成する遺伝子が人のDNAの中にあるのです。なぜそんな遺伝子があるのか不思議ですよね. . . 生物の進化を想像してみましょう。 |
太古の時代に… 単細胞の生物が漂って、まわりから栄養を得て分裂して繁栄していた。
まわりに栄養が無くなると、分裂をやめておとなしくしている。そんな「飢餓」のときに細胞は、自分の組織の一部を食べて分解して栄養を作り出し、これで生き延びる戦略をとった。これがオートファジーです。*補足(1)
多細胞の生物になると… 栄養を蓄える専用の「脂肪細胞」をもち、「飢餓」の備えをするように進化した。 脂肪細胞がオートファジーですぐに分割されては困りますよね。そこでオートファジーにブレーキをかける「ルビコン」が登場。*補足(2) つまり脂肪細胞の中にはルビコンが多くいることで、栄養分がオートファジーで分解されないようにして、栄養分を備蓄するよう進化したのだと思われます。 でも、脂肪細胞は良いとして、それ以外の細胞にとってはルビコンが無いほうが良いですね。 |
近年、ルビコンの研究が進むと次の事実が分かってきました。
事実 1)脂肪分を過剰に摂ると、ルビコンの量が増える。 事実 2)歳をとるとルビコンが増える。 高脂肪食を習慣にするとルビコンがどんどん増えて、内蔵とかが病気になる。例えば、肝臓の中にある脂肪細胞がどんどん膨らんでフォアグラ状態の「脂肪肝」になったりする。*補足(3) つまり、歳を重ねても老化を遅らせるためには、 - 積極的に「オートファジーを活性化させる」努力と - 出来るだけ「脂肪分を過剰に摂取しない」努力と が必要なのです。 |
補足説明
*補足(1):オートファジー(Autophagy) とは、「自分(auto)を食べる(phagy)」というのが語源です。 *補足(2):ルビコン(Rubicon) とは、カイサルがルビコン河を渡る時「さいは投げられた」という故事にちなんでつけられた名前で、命名者はこの本の著者である 吉森博士です。 *補足(3):アヒルや鶏の餌に大量の脂肪を与えて、ぶよぶよにした肝臓が「フォアグラ」で、「脂肪肝」はこれと同じです。 |
オートファジーを活性化して、リサイクルを促進するには、
次の三つの点を守って日常生活をすることです。
1)食材を選ぶ 2)食事時間を適切にする 3)運動をする | |
1)食材ですが、
「スペルミジン」
「カテキン」
「赤色天然色素のアスタキサンチン」
「レスベラトロール」
を含んだ食べ物が良いです。
「スペルミジン」は、豆類、発酵食品 に多く含まれている。 具体的には、納豆、味噌、醤油、チーズ、シイタケなどキノコ類に含まれている。 若い人は、自分の体の細胞内でスペルミジンを合成できるのですが、残念なことに「歳をとると激減するので、「歳をとったら、納豆にごはん、キノコの味噌汁」を食べましょう。 「カテキン」は、お茶 に。 「アスタキサンチン」は、サケ、イクラ、エビ、など に。 「レスベラトロール」は、ブドウ、赤ワイン に含まれている。 | |
2)食事時間ですが、
食事と食事の間を延ばして、空腹な時間をなるべく長くすることです。 細胞内が「飢餓状態」になるとオートファジーが活性化してリサイクルが加速するからです。 具体的には、「プチ断食」がよさそう。食後4時間もすればオートファジーは活性化するし、一食抜けばさらに活性化することになります。 ただし、極端な断食は体によくないのでやめましょう。*補足(1) | |
3)軽い運動をすることによって、オートファジーが活性化します。これはインスリン分泌と関連しているようです。 | |
まとめ 上記の三項目と、もう一つ
4)脂肪分の摂りすぎは控える。 具体的には、フライや肉の脂身など「油」です。*補足(2) 以下はこの本の著者の要約です。 「腹八分で、運動する、脂っこい食事を避ける」これに尽きます。 食べ過ぎたと思ったら、一食抜くなど軽めの調整で試してみることをお勧めします。繰り返しになりますが、「運動して和食を食べて、食べ過ぎない。そしてお酒が好きな人なら、赤ワインを楽しむ」のも良い。 | |
補足説明
*補足(1):極端な断食は論外として、スリム化を目的として断食を長くすると、お腹の脂肪細胞よりも筋肉細胞でオートファジーが最も活性化されて、筋肉が痩せてしまい「手足が細くお腹ぽっこりの体型」になるのが落ちです。 *補足(2):動物性、植物性に限らず油はオートファジーの働きを減らします。 「マックポテトは旨い、唐揚げもね!でも常食はやめて控え目に!」 なお、脂肪分は細胞に必要な成分でもあるので、極端な制限カットはいけません。 |
オートファジーは美容にも効果があるとコスメ界からも注目されています。
化粧品のコマーシャルで「皮膚のアンチエイジングに有効、しわが減るとか、張りが出る」とか宣伝されていますが、まだ実証されているものは多くありません。*補足(1)
実際、肌とオートファジーの関係はとても深いです。 | |
例えば「メラニン色素」、オートファジーで色を消せます。
人の皮膚の奥に「色素細胞(メラノサイト)」があって、この細胞の中にある小器官(袋のようなもので、メラノソームと言う)にメラニン色素を溜め込んで、近くにある皮膚の「角化細胞」に送り込みます。 この角化細胞こそが、みんなが見ている皮膚なのです。 重要なことは、 オートファジーが角化細胞の中にある「メラノソームを分解」してくれる可能性があり、皮膚からメラニン色が消えるのです。 また、白人の角化細胞ではオートファジーが活発で、黒人ではそんなに活発ではないことも分かっています。 すでに化粧品として商品化されているようです。*補足(2) | |
補足説明
*補足(1):化粧品のコマーシャルで「皮膚のアンチエイジングに有効、しわが減るとか、張りが出る」とか宣伝されていますが、「アンチエイジングの口上書きは眉唾と思え」医療品ではないので実証実験が少なく不十分なものがあって、100%は信用できません。 *補足(2):この本には商品名は書かれていません。ネットを見ると、 無名なメーカーの広告は眉唾ですが、有名な化粧品メーカーの「シミ消し」なる商品は実証実験済みなのでしょうね。 |
Copyright(c) 2021 BokerTov all rights reserved