第4章の中から抜粋、
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オートファジーとはいったいどんな役割をしているのか?
1)飢餓対策 2)新陳代謝 3)有害物の排除 初級編で説明した「自分(auto)を食べる(phagy)」、これが飢餓を生き延びる対策、オートファジー(Autophagy) の原点ですね。 実は、人は必ず飢餓に遭遇します。 赤ちゃんが誕生の時がそれで、赤ちゃんはへその緒が切れて栄養が断たれ、飢餓状態になるのです。この時、オートファジーが活発に働いて、赤ちゃんの細胞が自分で栄養を確保して生き延びることができる。 |
2)新陳代謝とは、
「伊勢神宮の20年遷宮」知ってますよね。スクラップ&ビルドで建物を永遠に維持管理する日本伝統のシステムです。 細胞はこれと同じことをせっせとやっているのです。 実際に、食事から摂取するタンパク質の大部分はエネルギーとして消費されてしまうので、細胞のリサイクルに必要なタンパク質は、オートファジーの分解で得るアミノ酸に大きく依存しています。*補足(1) 新陳代謝とは、健康管理を目的として、細胞内のゴミを回収しリサイクルして、日常生活の恒常性を担保することですね。 |
3)有害物の排除とは、
自分でない異物を侵入者として認識し排除すること。 免疫細胞(B細胞やT細胞)は、細胞の外側で、体内に侵入する細菌やウィルスなどの敵を攻撃してくれますが、細胞の中に入り込んだら免疫細胞とて手がだせません。 オートファジーは細胞内に入ってくる細菌やウィルスを退治してくれます。*補足(2) どうやって敵を認識しているのでしょうか? |
補足説明
*補足(1):60kgの成人が細胞のリサイクルに必要とするタンパク質は一日に240g 。一方で食事から摂取して使われるタンパク質は一日に70g だけ。つまり 240g - 70g = 170g の不足分は、オートファジーが分解して作り出している。細胞の数は37兆個もあるので、細胞一つ一つでは僅かな量でしかないです。 *補足(2):オートファジーは細菌やウィルスを退治しますが、ずる賢い敵もたくさんいて、オートファジーを無効にするタンパク質を持って武装しています。 残念ながら、サーズウィルス、その系統のコロナウィルスも退治できません。 |
オートファジーには、無作為に包み込むタイプと、狙い撃ちするタイプがあります。
狙い撃ちの対象としては 1)外部からの病原体(細菌やウィルス) 2)外部からのゴミ(結晶など) 3)細胞内部の壊れた小器官(ミトコンドリアなど) 4)細胞内部のゴミ(タンパク質の塊) 幾つかの共通した特徴があるようです。 外部の病原体やゴミなりが細胞内で移動中に、その輸送袋に穴が空いているとか、壊れた小器官に穴が空いていると、そこから内部が漏れ出ます。オートファジーは「空いていることを感知」してゴミ収集活動をすると考えられています。 |
有害物の回収のおかげでいろいろな病気が防げているのです。
例えば、 「尿酸結晶」は腎臓の細胞に悪影響して、「高尿酸血症性腎症」の病気になる。 「尿酸値が高いですね、ビールを控えて下さい」と言われた人は、血中の尿酸が増えると、結晶ができてこの腎症や通風になるので要注意です。 オートファジーはそんな有害物を除去してくれます。 |
また、最近注目されているのが「タンパク質の塊」です。
治療法がなかなか見つからない「神経変性疾病(アルツハイマー病やパーキンソン病)」は、脳の細胞の中にタンパク質の塊ができて、この塊のせいで細胞が死ぬことで起こります。 そのタンパク質の塊をオートファジーは狙い撃ちで除去してくれます。 |
これまでと重複もありますが、代表的な病気をまとめます。
1)生活習慣病 - 脂肪肝 - 2型糖尿病 - 動脈硬化 - 高尿酸血症 2)神経変性疾患 - アルツハイマー病 - パーキンソン病 - ハンチントン病 3)肝臓ガン 4)腎臓の病気 - 線維症 - 腎症 5)心不全 |
このような病気だけではなく、免疫を上げるにもオートファジーが必須です。
- 免疫細胞の幹細胞からB細胞 / T細胞になるとき - B細胞が抗体をつくるとき、など 老化すると免疫力も低下します。これを意識して、積極的にオートファジーを活性化する努力が必要になるわけです。 |
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