要約「10% HUMAN」


第3章 心の病気 (p97 - 129)

第3章の主要ポイント

 - 微生物の生き残り戦略
 - 自閉症 / アンドルー君の事例
 - 自閉症の謎、メカニズムの解明
 - 微生物が人の性格をコントロール



微生物の生き残り戦略

宿主の身体を変える


微生物:吸虫

宿主:カタツムリ(ヒラマキズミマイマイ)+ 蛙

(放射能による奇形ではない)

蛙がオタマジャクシから成長する過程で、吸虫の成長形体の構造が物理的に邪魔となり、蛙の足が途中から枝分れして成長し、奇形となる。

- カタツムリに寄生する吸虫が幼体で排出
- 幼体がオタマジャクシに寄生
- 蛙は幼体のせいで足が奇形となって成長
- 奇形の蛙は機敏でなく簡単に鳥の餌食
- 鳥は移動、鳥の糞から吸虫が湿地に落下
- 吸虫が新たなカタツムリに寄生
宿主の振る舞いを変える


微生物:冬虫夏虫(パプアニューギニア)

宿主:アリ

アリが胞子に感染してから、脳がハイジャックされ、森中の木に登って、葉っぱにしがみつき動かなくなる。

- 冬虫夏虫の胞子がアリに感染
- アリが葉っぱの上で固定したまま死ぬ
- 胞子がアリの身体の中から芽を出し成長
- 冬虫夏虫の胞子が飛び散る

別例1)ハリガネムシとカマキリ:
カマキリがハリガネムシに感染して水の中に自殺、水中でハリガネムシは繁殖して他の昆虫に寄生。

ハリガネムシのマインドコントロール術
別例2)トキソプラズマ細菌と猫と鼠:感染した鼠は猫を恐れず近づき、猫の餌食。トキソプラズマ細菌は人間にも感染することがある。
別例3)微生物ではないが、狂犬病ウィルスが犬に感染すると、犬は攻撃的なって他の犬に噛み付く、よだれから感染。


自閉症 / アンドルー君の事例

アンドルー君:1990年2歳で自閉症と判断


写真:姉エリン、アンドルー君、母エレン

- アンドルー君、生後15ヶ月で耳に感染症
- 医者から多量の抗生物質で長期に治療
- 耳は治ったが、振る舞い、性格が変化
- 消化器系にも下痢などの症状
- 1990年2歳で自閉症と判断

母エレンの探求活動による事実確認:
(1)自閉症児は健康児に比べ、腸内に「破傷風菌」類似菌が10倍多いこと、 (2)腸内には「破傷風菌」の定着を阻止する細菌類がいるのに、自閉症児にはいない、 (3)「破傷風菌」は血液から筋肉に集中するのに、自閉症児では脳に集中していること。

「エレンの仮説」
アンドルー君が自閉症になった原因は、多量の抗生物質の投与がきっかけで、腸内細菌のバランスが乱れて、必要な細菌を失った。それで腸内に「破傷風菌」が増殖定着した。そして「破傷風菌」が腸内から迷走神経を経由して脳に侵入し、自閉症になった。

アンドルー君4歳の時、試験治療を行った。
腸内にいる「破傷風菌」をパンコマイシンという抗生物質で治癒を開始。 2週間で、トイレ訓練、親との会話、共感、着替え、振る舞いが改善した。 しかし、パンコマイシンをやめると1週間で以前のように戻ってしまう。 残念ながら、脳の発達する幼児期を過ぎたため、自閉症のまま生きることになった。


自閉症の謎、メカニズムの解明

自閉症の謎とメカニズム

仮説1)冷蔵庫マザー仮説(1949年当時)。親が冷淡で脅迫観念的、物欲が強い場合、生まれた子は冷蔵庫に置き去れた状態で、引きこもり、孤独に安らぎを見いだす。
仮説2)自閉症は遺伝的なものだという仮説。これまでの一般的な認識。

エレンが論文発表「自閉症と破傷風菌」1998年。 パンドラの箱を開いた「腸内細菌の組成比が変わるとその人の行動も変わりうる」という概念。

マクフェイブの仮説」 何らかの理由で腸内細菌の組成比が変わることを契機に、自閉症となるメカニズムを解明。脳と腸との関連を研究するカナダ人マクフェイブ医師。

アンドルー君の姉エリンが、母エレンの意志を継ぎ、一般の自閉症児のために研究を続けている。


研究室では、無酸素で生きる腸内細菌を培養する装置「ロボガット」を使い、重度の自閉症児の糞便から集めた腸内細菌群に餌を与えその代謝物を取り出して成分を研究する。


微生物が人の性格をコントロール

伴侶を探しのプロセス
中米のコウモリ(サックウイングバット)は翼に袋を有する。袋の中に雌を誘惑するための性フェロモンをを生成。尿、唾液、精液を混ぜ、選び抜いだ細菌を入れて培養する。
ベルリン大学の伝説的実験「男子学生Tシャツを女子学生に匂いを嗅がせる好感度調査」。結果、自分と免疫型が似てない男性を好む。子孫に多様な免疫、異なるDNAを選ぶ本能。Tシャツの匂いは、脇の下に住む細菌と絡んだ匂いで、男子学生DNAの影響を受けてる。(現代の若者、消臭剤はそんな匂いを消している)
キスは人間だけでなく動物もキスをする。唾液にある微生物を交換する「試食」であり、相手の免疫型やDNAの「味見」であり、生理学的に信頼できるか選別判断している。
微生物は伝染する
病原菌(細菌やウィルス)は人から人に感染する。 マイクロバイオータ(腸内細菌)も人から人に伝染すると想定される。 他者と同じものを食べてトイレを共有すれば、互いの微生物を交換する機会が生じるし、ビジネススクールに行けば起業家志向の性格になる微生物を拾うかもしれないし、ロードレースを観に行けば、スリルを求める性格になる微生物を拾うかもしれない。性格特性が個人の枠を超えて拡張するという考え方にもつながる。



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ここからは付録、後でゆっくりご覧下さい!


第3章の詳細項目

 - 自閉症の拡大
 - 自閉症の原因「マクフェイブの仮説」
 - 「心の病気」の仮説の歴史
 - トキソプラズマ細菌の感染
 - 幸福感を左右するトリプトファン
 - コラム:迷走神経について


自閉症の拡大

自閉症の拡大
自閉症の定義(米国精神医学者 レオカナー1943年)
 - 外界に無関心、外からのものを全て無視
 - 他人とのコミュニケーションができない
 - 社会生活のルールが身に付かない
 - 決まった行動、単一考えに執着する
自閉症の子ども数推移(10年で2倍の拡大
 1960年    1 / 2500 人
 2000年    1 / 150 人
 2010年    1 / 68 人
 2020年予測  1 / 30 人
 2030年予測  1 / 家族 人


自閉症の原因「マクフェイブの仮説」

自閉症の原因「マクフェイブの仮説」

「プロビオン酸」→ 過剰で性格が変わる
「プロビオン酸」→ 減ると性格は戻る

プロビオン酸とは短鎖脂肪酸(酢酸、酪酸、等)の一つで、大腸の細菌群が未消化の残食物を分解して生成される。パン製造品の防腐剤としても使用されるが、毒ではない。

プロビオン酸を注入したラットは、迷路走行でルートが変わると対応できなくなる。つまり最初に覚えた道順を忘れることができなくて固執する。いったん記憶した脳内のシナプスは絶対に廃棄されないように見える。

マクフェイブの仮説」自閉症メカニズムは
1)何らかの理由での腸内細菌の組成比変化を契機として、破傷風菌を含む「クロストリジウム属」細菌が増える。
2)その細菌が、プロビオン酸を過剰に生成して、人の性格が変わる。 脳がハイジャックされて、食べ物の好き嫌い、強迫観念、さらには記憶保存力の増強(忘却を阻止する細胞が過剰)が生じる症状となる。
3)これが幼児期に起こると、脳のシナプス形成のプロセスが乱れて、自閉症となる。


「心の病気」の仮説の歴史

時代の流れに沿って仮説は変わる
19世紀:古い伝説「狂気は微生物が原因?」
20世紀(初頭):フロイト「精神分析理論」流行
20世紀(1949年):「冷蔵庫マザー仮説」
20世紀末:DNA開花時代「遺伝的な決定論」
21世紀:古い伝説がひねりを加えて復活
   「精神疾患の原因は微生物かも」


トキソプラズマ細菌の感染

トキソプラズマ細菌の感染


トキソプラズマ細菌の宿主は猫であるが、人間にも感染することがある。 猫好きの人は感染しやすい。 欧米での感染率調査(妊婦を対象):パリ 84%、ニュ−ヨーク 32%、ロンドン 22%

妊娠中に初回感染すると胎児に危険だが、妊娠以外では健康に影響が無い。 しかし、トキソプラズマ感染すると性格が変わることが分かっている。尚、ここ数十年で統合失調症などの患者に感染が見つかるケースが増加。



男性の場合、陰気、不安、疑い深い、嫉妬深い、社会ルールや道徳を無視の傾向。 女性の場合、陽気、明朗、心広い、決断力ある自信家、女性ガードが緩まる傾向。 男女共通に、反応が鈍くなり集中力を失うことが多い。 交通事故の入院者にはこの感染が多く、事故リスクが高い傾向もある。


幸福感を左右するトリプトファン

幸福感の心理状態を左右

神経伝達物質にはセロトニン、アドレナリン、ドーパミン、などがある。 セロトニンは気分や記憶を調整する物質で、腸内に90%、脳に10%。 基本アミノ酸の「トリプトファン」が「セロトニン」に変換される。
人体内で生産されて、神経の末端で小さな電気的興奮を生じさせる。 人体外から腸内細菌も、同じような物質を生産して迷走神経を刺激する。


トリプトファンが多いほど
 → セロトニンが多く → より幸福感になる
トリプトファンが不足なほど
 → セロトニンが不足 → より幸福感不在に
トリプトファンが定常的に不足すると、重度のうつ病にもなる。実は、うつ病は免疫系の機能不全が原因(第4章)


食物から腸内で、トリプトファン、セロトニンを産出する、というほど単純ではなくて、免疫系の働き(第4章)が絡んでいる。 (例えば、トリプトファンを産出してくれる細菌を、過剰に攻撃する免疫系の作用がある。その免疫系の興奮を抑制してくれる別の細菌が存在する。そんな細菌を活性化することが重要)


コラム:迷走神経について

腸は迷走神経で脳とつながっている。今は腸が何を消化してるか順調かなどを脳に伝える。「腹の虫」「虫の知らせ」のように、何かおかしい、トイレに行きたいと言った様に。
うつ病患者を明るくする装置「ハピネス・ペースメーカ」がある。これは、迷走神経の周囲にワイヤを巻き付けて電池でパルスを送り、患者の神経を刺激して幸福にする。






第3章のガッテン・ポイント

(1)人の脳をコントロールする微生物がある、(2)21世紀病の「自閉症児」の原因は、幼児期の腸内細菌のバランスの乱れである、(3)微生物は人の性格を変える、伝染もするということ。
(4)21世紀病の「自閉症児」は拡大している、(5)心の病気の仮説は歴史的に変化している、(6)トキソプラズマ細菌に感染すると性格が変わる、(7)アミノ酸のトリプトファンが多いほどより幸福になるということ。




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