要約「10% HUMAN」


特集 おもしろ記事の抜粋

特集の目次

 - 人体は一本のチューブのような(序論)
 - ニワムシクイの生態(第2章)
 - 粘膜好き微生物との共生(第2章)
 - 微生物の生き残り戦略(第3章)
 - 免疫学のおさらい(第4章)
 - Treg細胞への指示を出すのは(第4章)
 - コラム:チコちゃんに叱られる(第4章)
 - コレラ菌の戦略(第4章)
 - バイエル板とは(第4章)



人体は一本のチューブのようなもの(序論)

人体器官などチューブ
内部 心臓、肝臓、腎臓、筋肉、骨、血管、など 本体
外部 口、鼻、眼、皮膚、へそ、肛門、など 外側表面
腸管(小腸、盲腸、大腸、)、
胃、呼吸器、泌尿生殖器、など
内側表面
共生 微生物(細菌、菌類、)、ウィルス
"第二の皮膚"とも言われる
両表面



(参考図)人体は一本のチューブ



ニワムシクイの生態(第2章)

ニワムシクイの生態
イギリスからアフリカまで渡る茶色の小鳥


参考)ニワムシクイの奇妙な生態を動画で解説

エサを食べて脂肪をつけ2週間で体重17gから37gの肥満となり、数千km飛び元の体に戻る。


エサを食べて脂肪をつけ、2週間で体重17gから37gの肥満となり、奇妙なことに鳥籠中で大空を飛ばないのに、元の体に戻る

食べたカロリー以上に脂肪が蓄積し、運動量以上に脂肪が消費される。そんな何らかのしくみがこの鳥の遺伝子にプログラム化されている。



粘膜好き微生物との共生(第2章)

脂肪細胞が炎症を起こすケース


パトリスカニ(ベルギーの大学の栄養代謝学の教授)が、脂肪細胞が不健康になるメカニズムを発見した。


step1:腸内に住む「粘膜好き微生物」が減少
step2:リボ多糖(LPS)が血液中に入り込む
step3:脂肪細胞が炎症を起こして
step4:エネルギーが脂肪細胞に詰め込まれる
step1 の説明:粘膜好き微生物「アッカーマンシア・ムシニフィラ」 (ムシニフィラ=粘膜好き)

 粘膜好き微生物がびっしりと張り付いて層を作る。実は、この微生物が人の遺伝子に信号を送って粘液分泌を促し、できた粘液層に付着する。 こうして、人体の内部にリボ多糖(LPS)の侵入を防いでいる
step2 の説明:健康な人は、腸内細胞全体の4%が粘膜好き微生物で占められるが、BMI値が高い人ほど、この微生物が少なくなって層は薄くなる。肥満者に至ってはほぼゼロとなり、LPSが侵入して血液中に入る
step3 の説明:肥満者の血液中にリボ多糖(LPS)が入って濃度が高まると、脂肪細胞が炎症を起こして、脂肪細胞は分裂できない状態になる。
step4 の説明:健康な人がエネルギーを貯蓄する場合は、脂肪細胞が活発に分裂して新しい脂肪細胞に蓄えるが、肥満者の場合は、脂肪細胞が分裂できず数少ない脂肪細胞に多量の脂肪を詰め込むはめになる。 ここには免疫細胞が多く集まっていて、まるで感染症と戦闘中のようだ。



微生物の生き残り戦略(第3章)

宿主の身体を変える


微生物:吸虫

宿主:カタツムリ(ヒラマキズミマイマイ)+ 蛙

(放射能による奇形ではない)

蛙がオタマジャクシから成長する過程で、吸虫の成長形体の構造が物理的に邪魔となり、蛙の足が途中から枝分れして成長し、奇形となる。

- カタツムリに寄生する吸虫が幼体で排出
- 幼体がオタマジャクシに寄生
- 蛙は幼体のせいで足が奇形となって成長
- 奇形の蛙は機敏でなく簡単に鳥の餌食
- 鳥は移動、鳥の糞から吸虫が湿地に落下
- 吸虫が新たなカタツムリに寄生
宿主の振る舞いを変える


微生物:冬虫夏虫(パプアニューギニア)

宿主:アリ

アリが胞子に感染してから、脳がハイジャックされ、森中の木に登って、葉っぱにしがみつき動かなくなる。

- 冬虫夏虫の胞子がアリに感染
- アリが葉っぱの上で固定したまま死ぬ
- 胞子がアリの身体の中から芽を出し成長
- 冬虫夏虫の胞子が飛び散る

別例1)ハリガネムシとカマキリ:
カマキリがハリガネムシに感染して水の中に自殺、水中でハリガネムシは繁殖して他の昆虫に寄生。

ハリガネムシのマインドコントロール術
別例2)トキソプラズマ細菌と猫と鼠:感染した鼠は猫を恐れず近づき、猫の餌食。トキソプラズマ細菌は人間にも感染することがある。
別例3)微生物ではないが、狂犬病ウィルスが犬に感染すると、犬は攻撃的なって他の犬に噛み付く、よだれから感染。



免疫学のおさらい(第4章)



(参考図)免疫系のチーム

マクロファージ - - - 歩兵
B細胞 - - - 狙撃兵(特定の標的を撃つ)

T細胞(Th、Tc、Treg)の中で、
ヘルパーT細胞(Th)- - - 通信士官(免疫応答の司令官)
制御性T細胞(Treg)- - - 准将(免疫応答にブレーキをかける)
T細胞は、胸腺学校で厳しい訓練を受けて、生き残った未熟T細胞だけが成熟T細胞となる


(参考図)胸腺学校

制御性T細胞(Treg)



Treg細胞への指示を出すのは(第4章)

制御性T細胞(Treg 細胞)

准将 Treg 細胞は、興奮した司令官(ヘルパーT細胞)を抑える



免疫系は「炎症反応」の促進と抑制のバランスをとっている。自動車の運転に例えると、
    アクセルを踏み込みながら(ヘルパーT細胞)
    ハンドブレーキを軽く引き続ける(Treg細胞)

アクセルから足を離すと、免疫機能が停止して、病原菌が増殖する。 また逆に、ハンドブレーキから手を離すと、免疫機能が暴走気味になる。

准将 Treg 細胞に指示を出す最高司令官は、人間の細胞でなく、マイクロバイオータ(腸内細菌)だということ。 微生物にとっては、免疫系は穏やかで寛容なほうが都合がよい。



コラム:チコちゃんに叱られる(第4章)

チコちゃんに叱られる風のたとえ話
チコ「アレルギーって知ってる。何んでなるの?」
岡村「親の遺伝子とかの影響じゃないのかな」
チコ「それもあるけど、ボーット生きてんじゃないよ! アレルギーになるのは、あなたのお腹に回虫がいなくなったから!」
寄生虫とかを駆除し衛生的になり、「興奮した免疫細胞」が自分の身体を過剰に攻撃するようになった、これを「衛生仮説」という。「旧友仮説」では、微生物こそが「興奮した免疫細胞」を抑制する役割を持った昔からのお友達なのです。


(参考図)
寄生虫が Treg 細胞を誘導し免疫系を抑制
糖尿病ネットワーク(2020年5月)


コレラ菌の戦略(第4章)

コレラ菌の戦略

コレラ菌は宿主の腸内で増殖して、宿主が瀕死の状態になるとすばやく脱出する。

1)コレラ菌は腸内の壁に接着し猛烈に増殖
2)コレラ菌のCAI-1遺伝子の働で、微量の化学物質を放出
3)増殖してこの濃度が高くなり一定値まで達すると、コレラ菌のCAI-2遺伝子の働で、一斉に動作が変わる。これを「集団感知」という。
4)「ゾット」という毒素を出して、人の腸の隙間から水を出させる。この時、別な酵素を出して腸壁から離脱し、水と共に体外に脱出する。

宿主から追い出されるのではなく、自らの計画で脱出し、子孫を確実に増やす。人の機能である鍵穴、それを開く鍵(ゾット)をコレラ菌が持っていること。



バイエル板とは(第4章)

バイエル板とは
哺乳類の腸内には「バイエル板」とも呼ばれる特別な訓練場がびっしりと並んでいる。通過する非自己の異物を訓練場に引き寄せて、大量の免疫細胞たちに触れさせ、人体にとって有害で攻撃すべき敵の特徴を学習させて、戦闘力を高めている。

(参考図)バイエル板

NHKスペシャル「人体」2018年放送
万病撃墜!腸が免疫の鍵だった、





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