Step by Step

2021年6月6日 


お話「寿命のろうそく」

グリム童話「死神の名づけ親」の中から . . .


暗い洞窟の中で何本ものローソクがゆらゆらゆれている。死神は言った「この短いローソクがおまえの寿命を表している」
... (略) ...

というお話に出てくる「寿命を表すローソク」、これと同じようなものが人の体の中にあります。

「死神の名づけ親」はこちらを参照!

テロメアと寿命

細胞の中にDNAがあって、そのDNAの両端には「テロメア」と呼ばれる固定の暗号が書かれた余白があります。 具体的には「TTAGGG」という6文字セットが繰り返し長く並んでいる。このテロメアの文字の長さが寿命のローソクと同じなのです。

人の細胞が分裂するときに、DNAの両端にあるテロメアが少しづつ短くなる運命になっています。 それで、細胞の分裂を繰り返す度に短くなり、遂にはテロメアの余裕がなくなって、細胞分裂ができなくなる。それが細胞の寿命と言えます。


テロメアの長さは生物の種類によって異なり、 例えば、はつかねずみは9回、カメは100回、人は66回しか分裂できないのです。 縦軸が寿命、横軸が細胞分裂回数です。

寿命のある細胞とない細胞

細胞分裂すればやがて寿命となりますが、 体の細胞はその部位によって性質が違います。 例えば脳細胞は細胞分裂はしないし、血液とかは生まれてやがて死んでいく、など。

一方、生殖細胞は分裂してもテロメアのサイズが変わらないように守られています。つまり人は細胞が老いて死んでいきますが、生殖細胞はリセットされるので、生まれ出る赤ん坊のテロメアは長いのです。

人間でも、まれにテロメアの長さが少し短く生まれるたり、少し長くして生まれてこともあるそうです。その理由や仕組みは分かっていませんが。


参考 なぜテロメアが短くなるのか

人のDNAは二本の絡み合ったらせん状であって、細胞が分裂して増えるときに、DNAの二本のらせんから一本一本に離れます。各一本のDNAがそれそれコピーされて、また二本ずつのDNAが二組つくられて分離します。 このようにDNAがコピーされた後、テロメアが少し短くなってしまう現象が起こる。

なぜテロメアが短くなるのか、その仕組みを発見したのは日本人、岡崎博士です。 「岡崎フラグメント」とし世界的な発見で、現在の高校生物の教科書にも紹介されています。

「岡崎フラグメント」

DNAの構造に関する内容で難しいですが、 要は、DNAをコピーする時の作法が、二本のDNAの上下で方向が違うことから生じる結果なのです。

人が雑巾を手縫いする作法に例えれば、「直線縫い」と「かえし縫い」があるように、DNAコピーの作法でも、一方では「直線コピー」、他方は「かえしコピー」をしている。

このDNAコピーの作法は、その発見者の名前をとって「岡崎フラグメント」と呼ばれます。長いDNAの両端に少しズレが発生します。ズレを補正するために、テロメアの端が少し削除されて長さが揃えられる。結果、テロメアが短くなる。

下の図は、DNAコピーの手順を細かく図解したものです。





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