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   Memo - 気候緩和機能の経済評価 [2004年05月]
- 気候緩和機能とは
  • 農地で栽培される作物が光合成や蒸発散することによって,光や熱を吸収し,気温を下げる働き.とくに水田は水面からの蒸発によって気候を緩和していることにより,市街地及び都市気候の気温上昇(ヒートアイランド)が抑制されている.
  • このような,農地(農業・農村)が自然や社会の仕組みに果たしている多くの役割を多面的機能という.
  • そのうち自然科学的な機能として,気候緩和機能の外にも洪水防止機能,水資源涵養機能などが挙げられる.
  • 関連項目:多面的機能調査 小学生向け資料
-気候緩和機能の経済評価法
  • 直接法・・・・日本学術会議で採用
    • これは発揮された機能によって防止された災害被害額や,生産費用の節減額等によって直接的に評価する手法である.
    • 公共事業等の費用便益分析に広く適用されている.
    • この直接法は,多面的機能によって被害額の低減や費用の節減が生じる場合にのみ適用できる.
    • 評価の考え方がわかりやすく理解しやすいという点に特徴がある.
    • 直接法による評価方法は,代替法と混同されることが多い.
    • 気候緩和機能の場合,冷房使用料減少による電気代の節約という節減額によって直接評価できるという立場に基づいて評価されている.
-直接法による評価額算定例
三菱総合研究所(2001)による評価額算定式を用いて,実際に計算してみた.
  • 水田による気温低下効果の影響を受ける世帯数(世帯数):
    • 農業総合研究所(1998):国土数値情報1kmメッシュのうち水田面積の割合が50%以上であるメッシュの中の世帯数を地域別に算出.
       北海道:82,974戸 東北:678,998戸 北陸:590,636戸
       関東:819,151戸 東海:486,113戸 近畿:538,223戸
       中国:364,708戸 四国:375,714戸 九州:573,483戸
       沖縄:0戸
  • 冷房日数(日):
    • 理科年表(平成13年):日平均気温が24℃以上になる日数
       北海道:0日 東北:20日 北陸:48日 関東:43日
       東海:59日 近畿:73日 中国:67日 四国:76日
       九州:78日   沖縄:141日
  • 全国の一般家庭における冷房時間(時間/日):
    • 電器メーカーからの聞き取り調査から,6時間/日
  • 水田による気温低下(℃):
    • 農業総合研究所(1998):
    • 水田内部と水田外部(150m離れた地点)との夏季における平均気温差=2.5℃
    • 水田による平均気温低下効果=2.5℃×1/2=1.3℃
  • 冷房電気料金(円・(℃×時間)):
    • 電器メーカー聞き取り調査から:
    • 8畳間の室温を1℃下げるための1時間あたりの電力量:
    • 0.86kWh × 10分/30分 ÷ 1℃ = 0.28kWh/℃
    • 東京電力,従量電灯料金: 電力単価(kWh):16.41円/kWh
    • 8畳間の室温を1℃下げるための1時間あたりの電力量×電力単価(kWh)=4.59円/(℃・時間)
  • 近畿地方における水田のもつ気候緩和機能量の評価額
    • 近畿:538,223戸×73日×6時間/日×1.3℃×4.59円/(℃・時間)=14億667万円
    • ちなみに,全国:87億円
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