ダイヤモンドをどのように選べばいいのか分からない
さて何の予備知識も無いまま宝石店に行ってダイヤモンドの指輪を見たとしましょう。
ショーケースを覗いてみると、大きいもの、小さいもの、極く小さいダイヤモンドが
数多く入っているものなどいろいろあって、どこがどう違うのか良く分かりません。
値段はと見るとこれ又いろいろで、同じような大きさなのに値段が随分違ったりする
のですが、ショーケースの上から見ている分にはどれも同じように思えるかもしれま
せん。
そもそも宝石店に入ること自体多少の緊張感があるうえに、店の人と口でもきいて
商品をケースから出してもらった日には、無理矢理にでもなんか売りつけられるん
じゃないかと心配で、ゆっくりと見るどころではありません。
でもご心配はいりません。あなたはお客様なのですから、堂々と時間をかけて商品を
見ていきましょう。商品を出し渋ったり、説明がいい加減だったり、すぐ売りつけ
ようとしたりするような店だったら出てくればいいのです。
店の人に声をかけて、商品をケースから出してもらい手に取ってじっくりと眺めてみま
しょう。
そのダイヤモンドをよーく見てください。キラキラと輝く煌めきは無色ではなくて実は
その中に赤やオレンジ、黄色や緑色等いろんな色が混じっていることに気がつくでしょう。
いくつかのダイヤモンドが一見よく似ているようでも注意深く見れば一つ一つ違う
ことが分かるでしょう。また中には輝きが鈍いものや、白く濁ったようなものもある
ことに気がつくかも知れません。
さあここでダイヤモンドの品質について質問してみてください。通常はここで
「4C」の説明があるでしょう。4CとはCを頭文字に持つ、品質等を示す4つの言葉の
ことで、そのダイヤモンドの品質や重さをあらわしています。
4C
Cut(カット/研磨された形のよしあし)
Colour(カラー/色味)
Clarity(クラリティー/透明度のことで俗にいうキズの程度)
Carat(カラット/重さの単位で1カラットは0.2グラム)
この解説は別のコーナー(4C)にしているのでご覧下さい。
ここで重要なのは、4Cがすべてを計る物差しではないということです。
長く宝石業に携わっていると、同じグレードを持つダイヤモンドでも見比べてみると
その輝きに歴然とした違いがあることを経験します。
鑑定機関による差とか鑑定士の判断の差とかいうことではなく、invisible fault
(見えない欠点)が輝きに障害を与えている場合があるのです。理由はさまざま
ですが主に原石の結晶の状態とカットグレードの採点に関与しない部分の違いが
あげられます。
オクタヘドロと呼ばれる理想的な形状のダイヤモンド原石
ダイヤモンドの原石の中で最も好ましくかつ最も自然な形は、octahedroと呼ばれる、
ちょうどピラミッドを上下に背中合わせに合わせたような正8面体ですが、中には
結晶する途中で180度ねじれるものもあります。カットされた後では一見分かりま
せんがoctahedroの方が好ましいのは言うまでもありません。
また表面の研磨状態を示すポリッシングマーク(研磨痕)についていえば、鑑定書
作成時の基準である10倍に拡大しただけで見えるダイヤモンドもあれば、10倍では
見えなくて電子顕微鏡で見えるものもあるし、ラザールキャプランの様に電子顕微鏡
でも見えないほどきめ細かく研磨されたものもあります。
人間の目は思った以上に精巧に出来ていて、こうした違いを感覚的に見分けることが
出来ます。
指輪のデザインも非常に重要な要素です。
ダイヤモンドの美しさを活かしているか、指にはめたときにきれいにフィットするか、
自分のファッションや感性にマッチするかどうかいくつも試してみて下さい。指に
はめる時の感触はどうですか?ていねいに加工された指輪は必ずといっていい程
手触りもつるっとして気持ちいいものです。
指にはめた感じがよくないものや、雑な作りのものは避けた方が無難です。
ダイヤモンドは我々人類が知る物質の中で最も硬く長期間の使用にも磨耗することが
ありません。その安定した分子構造のおかげで、熱湯や身の回りに存在する酸や
アルカリ、洗剤、アルコール、シンナー、などにも変質しないのです。
この硬さこそがダイヤモンドをダイヤモンドたらしめる一番の理由で、他の耐久
消費財と根本的に違うところなのです。
大昔のダイヤモンドの婚約指輪 / 原石をそのまま使用している
あなたが買ったそのダイヤモンドは、年月を経てもなおいつまでも変わらずにあなたの
思い出と共に輝き続けることでしょう。食料や水と違って宝石が無くとも人は生きて
行くことが出来ますが、太古の昔から人は宝石を身に着けてきました。
これこそ人間が人間であることのあかしなのです。
あなたが身につけるダイヤモンドは、時にはあなたに自信を、時には力を与えて
くれたり、また時には愛を、歴史をも感じさせてくれることでしょう。
人生の長い年月を共に分かち合える、そんな気持ちで選んで欲しいと思います。