2004.1

今回は長くなり、ちょっとぼやき気味になってしまいました。
実は私、Crusadersおたくであり、Phill Woodsおたくでもあり、さらにThad=Mel Orch.おたくでして、
それからそれからまだいろいろあるんですが、とにかくまあそんな私にとって
このところ気になるアルバムがいろいろリリースされたのでした。



RURAL RENEWAL / THE CRUSADERS

で、まずはCrusadersです。
アルバム出してくれるだけで幸せなんです。もう何でもOKよ。無条件で受け入れるから。
ジョーも、スティックスもいて、ウェルトンもごりごりやってるねえ、、、
おまけにクラプトンですか、ああありがたや。
いいよ〜いい。うれるよ〜うれる。
こんなアルバムを前に、とにかく冷静ではいられない私であります。
でもなあ、何だかあの「ほこりっぽい感じ」はどこかへいっちゃったんだよね。
聴いてる方は、一番楽しかったScratchの時代には決して戻れないことが
分かっていながら、それでもつい「あの時代」を求めてしまうのでしょうか。
"Goin' Home"という今の時代の"Way Back Home"を演奏してるけど、
メンバーも「あの頃は俺らの時代だったよなあ」って昔を懐かしんでるような雰囲気。
ただ、「Wayne Hendersonの史上最高にかっこいいメンバー紹介」*註1
はScratchでしか聴けないんだよね。
もしあなたが聴いたことなければ、それはとても幸運なことです。
初めて聴く楽しみが待ってる訳だから。
*註1:単に私が言ってるだけなんですが、ほんとです!


SCRATCH / THE CRUSADERS (1974)

Phil Woodsもwith stringsの新しいアルバム出したんです。
とにかく私にとっては神のような存在なんです。
かつてはクラブでのライブもマイクなし、生音だけで演奏していたこともある。
アルトが鳴る鳴る、相変わらずすごい。すごいんだけど、ちょっと変化があった。
一時ほどダーティトーンまみれでないし、ギラギラがとれていい意味で枯れてきたようす。
ロマンチックで今の時代の企画だなあ、そう、いかにもVenusらしい。
VenusはかつてのBlueNoteだと最上級のほめ言葉を送る人もいるけど、
これでもかってあざとさが目について、避けたい気分になることもある。
私がひねくれてるんでしょうか。
その上スイングジャーナルではゴールドディスク選定。
神業のようにうまいし、誰が聴いても心地よい仕上がりだし、そりゃ悪くはない。
でもねえ、ゴールドディスクに選ぶ盤ではないよ、と長年Phil Woodsを聴いている私は思うんです。
私はハードバッパーでもなく、ましてや4beatオンリーでもなく、相当「間口」が広い方だけど、
そんな私からしても、ここ何年もスイングジャーナルは全くどうかしてしまってる。
ゴールドディスクには「スムース」であることが必須なんだろうか。
と言っても、このアルバムが単に「問題作」でないということを言いたいだけで、
これが私の愛聴盤になることはまちがいないのです。
かつてニューハードをバックに従えて、圧倒的なパワーで聴衆をノックアウトしたが、
ストリングスとのからみやPhilのフレージングには当時のサウンドが重なって聴こえます。



THE THRILL IS GONE / PHIL WOODS

この20年というもの、ジャズは何かを生み出したのだろうか。
次の時代を感じるようなわくわくする気分はどこに行ったら聴く事ができるのだろうか。
ライブでは相も変わらずスタンダードナンバーでソロを回していっちょあがり。
CDアルバムはBGMになりそうな企画ものやら再発ものの嵐。
昔の遺産でどうにか生きながらえてる。
未来を感じるような演奏が聴きたいよう!



COME AWAY WITH ME/ NORAH JONES

おまけ1
POPSではNorah Jonesが席巻しているようだけど、
これまた極め付きの聴きやすい!ソフト!メロー!さらに懐かしい感じ!
誰が聴いても心地よい、アコースティックサウンドなんですね。
これがグラミーか〜、ビルボードで46週トップか〜、アメリカが変わったことに驚く。
ちょっとカントリーっぽくて、他にもこんな歌手はいるよね。
クリスタルゲイルとか、リンダロンシュタットとか、どうしてるのかな?
(ちょっと違うけど私ならキャロルキングがいいけど。)
景気も悪くなっちゃたし、テロとか戦争とかあって、もうアメリカ人も競争に疲れ果てて、
なぐさめてくれるような暖かいものを求めてるんだろうか。
かつてのマドンナとかシンディローパーみたいな元気爆発系シンガーは
景気のいい時なら行け行けどんどん気分よく聴けても、今は
「オレ体調わるいからさあ、ちょっと勘弁してくれよ〜」って感じでしょうかね。


TARANTELLA / CHUCK MANGIONE
おまけ2
ごめんなさい。このチャックマンジョーネはLPで持っているのですが、
残念ながら元々CDでは発売されていません。
でもここに出てきたのには訳がある。ちょっと聞いてください。
先日、遠方から私を訪ねてきてくれまた人がいます。そのきっかけがこのアルバムでした。
中学の頃、ラジオで流れた曲をテープに録音して、よく聴いていたのだけれど、
ご家族が誤って消してしまったとか。その後、イタリア難民チャリティなにやらという
ことを頼りに探してみたものの、結局わからずじまい。それがインターネット時代の
おかげで、このアルバムに入っている曲だということが分かったそうです。
そこで是非このアルバムを聴きたいとのことでした。
このアルバムについては、随分前にも何とプエルトリコから問い合わせがありました。
そもそも日本語オンリーのホームページなのに、なんでプエルトリコから?
旅行に行くたびに、世界各地のレコード(CD)店でこのアルバムを探しつづけているのに、
未だ見つけることができなかった。あなたのホームページに載っているこのアルバムは
日本では発売されているのか?あるなら買って送ってくれないか。というものでした。
私もJAZZファンの気持ちはよーく分かる。でも売ってないんだよね。
その後いろいろあって、何とか彼の願望を叶えることが出来てめでたしめでたしとなりました。
このライブアルバムはおもしろい。
ラウンドミッドナイトとかマンテカとも演奏してるんだけど、めちゃくちゃかっこいい。
ガレスピーも出てきてビュンビュン吹きまくってる。
一晩中演奏してるからへろへろになってて、翌日の飛行機の
時間を心配してるMCがあったり、チックコリアがラッパ吹いてたり、どうも普通でない。
いろんなエピソードが生まれるのは、
このアルバムには人の心を引きつけるSomethingがあるんだろうな。




HOMAGE / THREE FOR BRAZIL

最後にボサノバのアルバムです。
来日したこともあるけど、私は勉強不足なのか初めて聴きました。
甘ったるいだけのボッサじゃなくて、サックスが入ることで
めりはりが効いててさばさばした実にいい雰囲気。
サービスでブルーライトヨコハマが入っている。
こうして聴いてみるとエキゾチックな曲でもあるんだ。

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2002.6

サイラス・チェスナットのピアノ、ジョージ・ムラーツのベース、そしてルイス・ナッシュのドラムによる最新作で、
このユニットの4作目にして初の、待望のトリオでの録音となった。
こんなに明るい「ジャンゴ」は聴いたことがないし、「タクシー・ドライバーのテーマ」はスコセッシの描いた
どろどろとした狂気やトム・スコットのウエットなアルトの官能的なサウンドとは異なり、
「湿度の低い」さらっとしたサイラスの世界を創り出している。
マル・ウォルドロンの対極に位置すると言えば、分かりやすいか。
しなやかでスムーズなサウンドは現代的で、「胃」がもたれることはない。
N.Y.録音だが実にL.A.ぽいんだなあ。


LOVE LETTERS / MANHATTAN TRINITY

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2001.6

いいCDに巡り合えました。
まずは2枚紹介しますが両方共に、奇しくもテナーサックスのリーダーアルバムで、
しかも2曲のボーカルトラックが入ってるところまで同じ。
と言っても、傾向は全く別物で、イーストコーストのブレッカーにウエストコーストのハリー
(シカゴ生まれなんだけど、あくまでサウンドの話です)と対照的な2人です。
2001年のベストアルバム争いにはいずれもが顔を出すこと間違いないと言っておきましょう。

Nearness Of You : The Ballad Book / Michael Brecker / in 2001
(ニアネスオブユー:ザバラードブック/マイケルブレッカー)
期待の3乗ぐらいの気持ちで待ち望んだこのアルバム、タイトル通りで
バラード中心の大作です。パットメセニー、ハンコック、デジョネットに
チャーリーヘイデンとウルトラ級のメンバーで固めてるんだけど、
それぞれが「俺が俺が」じゃなくて、緊張感を持ちつつもリラックスした
プレイを聴かせてくれます。
決して気の抜けたところはないんだけど、このゆったり感は
脳天どっかにもってかれるみたい、いいねえ。
300馬力の車で走る時速100kmと言えば分かってもらえますか?
その上、このがちがちのジャズメンバーの中で、ジェイムステイラーが
何とも言えない程いい味出してるんですよ。
Don't Let Me Be Lonely Tonightで見せる、30年という時を経ながら
70年代のスタイルを全く崩さないジェイムステイラーと、
21世紀の「モダン」に進化したブレッカーの友情に満ちあふれた
実に自然なコラボレーションはストレス多き人の胸を打つのです。
私は歴史に残るアルバムだと思います。

Dreamer / Harry Allen / in 2001
(ドリーマー/ハリーアレン)
天性の明るさから来るのか、スムーズでメロディクなフレージングが
ボサノヴァ中心の選曲と相まって、サングラスをかけて聴きたく
なるような「まぶしさ」を感じさせます。
しかもジャケットが秀逸で、これがLPならなあ!!!と思わず過去を
振り返ってしまいます。余談ですが、私のリビングには今、黒いオルフェの
サウンドトラックとジョンクレマーのブラジリアのLPが額に
入って掛かっています。こんなことが出来るのも30cm角のアートだから。
それが今じゃ12cm角だからねえ、、せめて「紙」にしてほしいよ。
ゲッツを「社交的」にしたような堂々たるサウンドにはハリーの大きな
世界を感じるし、大体これ聴いていい気分にならない人はいないんじゃ
ないですか。あんまり爽やかにやってくれるもんだから、かえって
少しは「はずしてくれよ」と思うのは、私がひねくれているんだろうか。
ヴオーカルのケヴィンレトーはデビュー時から注目しているんだけど、
彼女の持つ「あやうさ」がこのアルバムのいいスパイスになっている。
サウンド、選曲、演奏、すべてに於いてけちをつけるところの無い
得した気分の64分。
ウエルバランスの一枚で楽しい夏を!

そしてもう1枚遅ればせながら紹介します。

Chattin With Chet / Till Bronner / in 2000
フォントがないのでドイツ語が正しく綴れないけど、ティルブレナーと読む。
Chetとはもちチットベイカーのこと。ラッパをオンマイクで録音して
とにかく身震いするぐらいクールでかつファットなサウンドは異次元の世界。
何が何でも聴きなさい!と言い切れる一枚。

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2001.2

NHK-BSでジョアン・ジルベルト(ボサノヴァの生みの親)と
アントニオ・カルロス・ジョビン(ボサノヴァを広めた偉大な作曲家)を
取り巻くエピソードの特番が放映されていましたが、見ましたか?
より純粋にブラジル音楽として自ら生みだしたボサノヴァを追求するジルベルト、
一方アメリカを舞台に次々と名曲を世に送り出し
よりポピュラーな音楽としてボサノヴァを広めるジョビン。
いずれも欠くことの出来ない存在でありながらも、歴史的な一度きりの
レコーディングを最後に2本の線は再び交わることはなかったのです。
アメリカジャズ界のスターであるスタン・ゲッツ(テナー)、
そのプレイスタイルが気に入らないと再三注文を付けるジルベルト、
間に入って通訳を演じながらレコーディングを成立させようとするジョビン、
その日そもそも歌うはずのなかったアストラット・ジルベルト、
一目でアストラットの歌がヒットに結びつくことを見抜いたプロデューサーの
クリード・テイラー(後のCTIレーベルの創始者)、
レコーディングに参加したそれぞれの思いや事情が複雑にからみあいながらも
完成したアルバムは今なおボサノヴァのスタンダードとして生き続けている。
The Girl From Ipanemaを聴く時、つい感傷的になってしまうのには訳があるのです

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