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「The Bible Code」by Michael Drosnin の日本語版は、 新潮社から「聖書の暗号」として1997年8月30日に出版されている。
注意すべきことは、エレサレム・レポート誌も書いてあったように、 ドロズニンの著作での彼の主張を「鵜呑みにする」ことではなく、 それは一つの聖書注解(ミドラッシュ・ハダッシュ)にすぎないという姿勢で この本を読む必要があります。
実際に、「聖書の暗号」は約100 個のケースの暗号解読を紹介しています。
全体の印象としては、
世紀末に関連したアイテムに著者の興味が集中しすぎているのが、
読者に不安を煽ったことになり、まずかったような気がします。
(もっとも彼はその推論を本当の予言だと信じているのですが)
このコーナーでは、ドロズニンが布教した「聖書の暗号」をテキストとして使い、
著者が示した暗号解読の事例の中から幾つかを選んで、その説明が事実であるのか、
それは偶然なのか、意図的なのかを少し調べてみたいと思います。
その後、この暗号解読方法(等距離文字列法:ELS)を使って、
できれば未来に大きな希望が持てるような「将来への進歩の鍵/ヒント」を探してみたいですね。
このエレサレム・レポート誌(September 4, 1997)を要約すると
チェコのプラハに住むラビ、H.ミハエル.D.ヴァイスマンデル(Weissmandel)で、
50年以上も前のコンピュータのない時代であった。
彼の方法は、「各行10文字で10行ずつ、合計100文字を一枚のカードに書く」
というようにして、トーラ全体を索引カード(おそらく3千枚以上)に書き出し、
等間隔で文字を拾い出すという方法で言葉を探し出した。
これによって彼が見い出した発見は、例えば、
トーラの五書のそれぞれの最初のページに「トーラ」という文字が暗号となって
隠されていた、というたぐいのものであった。
イスラエルの二人の学者、数学教授エリヤフ・リップス(Eliyahu Rips)、
物理学者ドロン・ウィツタム(Doron Witztum)によって、
1980年代にコンピユータ実験をもとにした
「等距離文字列法(ELS: Equidistant Letter Sequences)」の研究が発表された。
これによって彼らは、32名の歴史上で卓越したラビの名前を
等距離文字列法によってトーラの中から見出し、
その周辺にそのラビたちの暗号化された生没年が表われることを証明した。
しかし実際に米国の数学専門誌「Statistical Science」に論文として印刷されたのは
1994年。
5年前に、イスラエルを訪れたマイケル・ドロズニンが二人の研究成果を知ることがなければ、
この研究は多くの人々に知られることはなかった。
1997年春に、「The Bible Code」by Michael Drosnin が出版されると、
センセーショナルを引き起こし、イスラエルを含む9カ国でベストセラー第一位となった。
本エレサレム・レポート誌では、 ドロズニンの著作への反論、二人の学者の実験に対する疑問、 論文に対する批判などを紹介していますが、それは省略。 その最後のむすびの一部分だけ引用しておきます。
論争を戦わせるべき問題は、現代になって「聖書に隠された暗号」が「発見」されたのは、 宗教に無関心な人々があがめたがるコンピユータ、現代のシナイ山での啓示に あたる装置を用いて、神が無関心な人々を啓蒙しているということだ。
しかし、宗教の主要な要素が信仰であるなら、全能の神がどうして、実験によって証明 できる証拠と信仰を取り替えようとしたりするだろうか。