・・・ わたしがあえてこの作品を傑作といった理由は、それが、傑作とよばれるもの の絶対条件の一つ「永遠性」をそなえているということです。 この時期に、ヨーロッパではジャズに関してさまざまな実験がもて遊ばれていたわけですが、 それら全ての中で「世界の創造」だけは、ジャズとのわるふざけとしてではなく、 ほんもののロマンスとして完璧なすがたをあらわしたのです。 ではこれを調べてみることにします・・・(中略) ミョーのスコアは、まず最初にプレリュードとフーガではじまります。 無邪気にもそのプレリュードは、ほとんどバッハ的ともいえるあいまいな旋律から はいってゆくのです。このページ先頭へpart_m01(before、next) (MIDI=0.5kbyte)
ここには、それがサキソフォンで演奏されているという以外には、ジャズを思わせる点は なにひとつ見あたりません、そして・・・(中略) つぎに、この穏やかなムードの中に、どぎもをぬくようにジャズ・フーガが乱入して きます。あららしくパーカッションをともなって、粗野に、しかしそこには、あの洗練 されたフランス人の手による抑制が、どこまでも働いているのです。
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まったく異様なくみ合わせです。 このきたないブルーノートとシンコペーション。
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(ブルーノートについては、こちらBlue Noteをどうぞ)ところが、それを優雅に扱うシックでかわいいフランスのオーケストラ、しかも そのフーガは、ヨーロッパの対位法の偉大な伝統にもとづいた、真に、純粋な正統派の バッハふうのテーマなのです。このフーガのテーマと、最初のあのバッハ風テーマとが 同時に演奏される次の部分をお聴きください。 ここでは二つのテーマが一方はフルートで、他方はチェロでかさなり合っているのです。 しかし終始一貫してこの曲の調子を支配しているのは、まさにこの粗野と高度の洗練と の奇妙な組み合わせなのです。
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たとえば、この曲ぜんたいを通じての主要なモチーフは、 「グッド・イブニング・フレンド」としてひろく知られ愛されているあの音です。
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しかし、ミョーの繊細な手にかかるとこのフレーズは、つぎのように大変おもしろい パッセージに見られるとおり、あたらしい叙情的なよそおいを与えられるのです。
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このような、あらあらしく非常に低俗な素材のなかにさえ、作曲家の個性がどれほど力づよく、 光をはなってながれているのがおわかりになることと思います。 それに、終結部のデキシーランドの大合唱のなかにさえも、・・・(以下省略)