In 1996,Reports - Around of Japan by bicycle -


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大学巡り


 発直前の3月6日、指導教官のところへ出発の挨拶に行った。この旅を理解していただいたこと、休学を許可していただいたことなどお礼を言って退出しようとしたとき、あるものをいただいた。それは一枚の紹介状であった。この一枚の紹介状が旅の間に果たした役割は、はかり知れない。まるで印籠のようであった。しかし、このときはまだその価値を理解してはいなかった。出発前に突然もらった紹介状を、どう有効に利用すべきか私はずっと考えあぐねていた。各地の大学や施設を訪ねてまわったらおもしろいだろうと、早い段階から思ってはいたが、いざ大学へと赴こうと思うとどうすればいいのかわからず、後込みしていた。この紹介状一枚をもって見ず知らずの大学生がやってきたところで、相手にしてはもらえないだろう。そう思うと勇気が出ず何もしないまま約1月を過ごしてきたのであった。

 賀大学に友達がいた。愛媛大学農学部では3回生の夏に測量の現地実習をおこなう。全国各地にある事業所などに赴いて約3週間ほどの実習をおこなう。私は、沖縄の宮古島水利事業所で地下ダムを取り扱いつつ実習を行った。他の大学からも同じように実習にきていた。そのとき知り合った中の一人である。
 数日前に電話をし、その彼女に会いに行った。沖縄でのことや、これまでの旅の経過などを話したあと、彼女の案内で大学の研究室などを見せてもらうことになった。私は思い切って彼女に紹介状のこと、有効に利用したいと思っていることを告白してみた。結果、彼女は先生方に事情を説明して、私を引き合わせてくれたのであった。私自身こういった経験は初めてだった。どの様に話をすればいいのかわからなかったが、先生方の多くは大変理解していただき、自分の研究成果を説明してくださったり、他の大学の先生を紹介してくださったりと、思っても見ないような成果があった。

 れでとても自信がついた。何もそんなに怖がることはなかったのだ。自分の思っていることをきちんと伝えれば、迎え入れてもらえる。そう思うと、これまで一ヶ月間何もせずに過ごしてきたことが悔しくなった。けれども、これから続く長い旅路がまた一つおもしろくなったことを素直に喜んだ。


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