In 1996,Reports - Around of Japan by bicycle -


PREVUPNEXT


新たなネットワーク


 女はまた、ある研究室に案内してくれた。そこは文化人類学の研究室。そこの助教授に会わせてくれた。

 先生は、文化人類学としてオーストラリアの原住民であるアボリジニーの生活などを研究しいてた。長年研究を続けるうちに近年、アボリジニーの中に被爆症状が見られるようになった。よくよく調べてみると近くでウランが掘り出されていた。そのウラン。どこに行くのか調べてみると、なんと日本に輸出されている。日本になぜウランが輸出されるのか調べていくと、そこに原子力発電所が見えてきた。日本人の生活を支える電気を作るために遠いオーストラリアの地で、何も知らないアボリジニーたちが被爆している。そう思うといてもたってもいられなくなり、日本の原子力発電所に関わる問題を取り扱うようになってきた。ひとえに原子力発電所に関する問題といっても様々なものがある。立地場所の環境問題。行政の問題など。そうして、現在様々な環境の問題に取り組んでいるという。

 んな現実さえ知らなかった自分は、はっとさせらた。そもそも環境問題には強い関心があった。土木史跡を見てくると決めたのもそのためだ。自分なりにいろいろと学んだつもりでいたため、環境問題というものをある程度知っている気だった。
「ひとえに環境問題と言っても様々なものがある。自然景観的なものや動植物の生態系のこと、ゴミ問題、食糧問題、原子力発電所問題等。せっかく自分の足で日本各地をくまなく見てこようとしているんだから、環境問題といわず、いま日本が抱えている様々な問題をきちんと見てきたら、君の旅はきっとすばらしいものになるよ。」
先生はそうアドバイスをくれた。そうして、アイヌ問題を取り組んでいる方、朝鮮人の差別問題に取り組んでいる方、農業をやりながらゴルフ場の建設反対運動をされている方など、様々な方々を紹介してくださったのである。

 直にいうと、旅が縛られてしまうのではないのかと不安になった。そもそも旅の動機といえば、今しかできない、気ままな長旅をしてみたいというもの。これでは、堅苦しいものになってしまうのではないか。
 確かに、「気ままな旅」も一つの動機ではあるが、今しかできない旅という意味においては、これに勝るものはないのではなかろうか。日本の”今”を見てくること。それはまさしくこの旅でしかできないことなのである。
 私は決心をした。ジャンルなんて関係ない。自分の目でいろいろな”今”を見てこようと。


PREVUPNEXT


Copyright(C)1998 Shinichi Takeshita.All Rights Reserved.