In 1996,Reports - Around of Japan by bicycle -


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中海・宍道湖


 伊川下流、宍道湖と中海の中間に位置する松江で休憩をとる。やがて米子市へやってきた。ここで、ある研究会のみなさんにお会いした。1970年に会を結成。71年に代表が市会議員となり、それまでの市民運動としてよりも、市政におおきく関わる立場で、様々な問題に取り組んできた。現在は、国営中海土地改良事業すなわち中海・宍道湖の干拓事業に住民・環境の立場からの反対運動を展開している。

 の国営中海土地改良事業とは、島根・鳥取両県にまたがる中海と宍道湖を淡水化して農業用水を確保し、中海の5カ所に干拓地(2500f)を造成する農水省直轄の土地改良事業で1963年にスタートした。かねてから水質環境の悪化が懸念され、1988年に淡水化事業は凍結された。4カ所の干拓地は部分完工し、最大面積の本庄工区は干拓堤防や排水機場のみ完成し、水面のまま残されていた。本庄工区の面積は東京ドームの360倍に相当する。
 こでの反対運動の理由は以下の通りである。
・莫大な地方負担金が与える島根県及び住民のへ負担。
・両県の農地が減少し続けている現実があると同時に、減反政策による水田の生産調整の影響を考えると造成される土地が有意義に使われるのかどうかが疑問。
・現に現在までに完工している揖屋・安来工区では今も3分の1の農地が売れ残っている。
・96年3月に環境庁が島根県の行った水質予測調査が不適当であることを指摘すると同時に、農水省も懸念を表明している。
・住民の根強い反対運動にも関わらず、県は「全面干拓・農業利用」をあくまでも進め農政局に回答している。

 こまで来てさらに強引に事業を押し進めようとする姿勢に嘆かざるを得ない。いったい日本という国はこのような問題をいくつかかえているのだろうか。
 翌日、本庄工区の堤防で陸つなぎになった大根島にいってみることにした。中海の東岸を北上する。途中、すでに完成している彦名工区によってみる。ここは、干拓工事中にできた沼に数多くの水鳥が住み着くようになったため、計画を変更して水鳥公園に仕立て上げたらしい。

 港市に入ってすぐ西へ行くと、堤防が島までのびている。この大根島はボタンの花と朝鮮人参の産地だ。ちょうどボタンの満開の時期だったので、多くのマイカーがこの狭い島に押し寄せ各農家の畑でボタンの花を買っていた。堤防ができたおかげで観光客が来るようになり、この八束町はいま沸いているという。何とも皮肉なものである。


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