In 1996,Reports - Around of Japan by bicycle -


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 11月10日。12:30。昼食を取りゆっくり休憩してから出発した。ついに峠道がはじまる。現在の標高約780m。めざすは標高2127mの麦草峠。その差約1300mだ。距離にして約26kmの行程、ざっと見て3時間ほどの戦いだ。
 取っつき部分は急勾配だ。3kmで約200mもあがる。それから200mあがる毎に休憩しながら走る。全体として7〜9%の坂になっている。車はほとんどなく走りやすい。紅葉はほとんど終わっていて何となくもの悲しい。八千穂高原の辺りに来ると少し勾配が緩くなったが、1800m地点からさらに急勾配になる。8〜9%の坂とヘアピンカーブが連続。全身汗びっしょりであるが、この辺りまで登ってくると寒さが専攻する。平地との温度差は約10°C。

標高1800mで安房峠を越えた。
標高1900mで金精峠を越えた。そしてついに標高2000m。
PM4:50。ついに標高2127mの麦草峠にたった。


 れまで数多くの峠を越えてきた。そして今日、その中でも再標高点の麦草峠を越えた。この峠は思っていたほど苦しくはなかった。6月に越えた安房峠よりも遙かに高いにも関わらず、そんなに苦労はしなかった。この二つの峠越えにはどんな違いがあるのだろうか。
 飛騨高山から上高地へと抜ける安房峠は苦しかった。なぜ苦しかったか。それは峠を甘く見ていたからだった。なかなか頂上の見えてこないことに動揺した。なかなか進まない。時間だけが過ぎていくように感じた。心の焦りが、身体の疲労につながった。身体が疲れるとよけい前に進まない。この悪循環にとらえられた。
 あのときは時間と道のりをとにかく意識していた。峠道をその他多くの道と同様に考えていた。だから苦しかった。

 れども今回は違った。今回だけではない。碓氷峠、金精峠、いろは坂など。そんなに苦しんではいない。なぜか。時間を意識せずに登った。じっくりと一つの峠に取り組んだ。その心構えが、峠越えを楽にさせたと思われる。もちろん体力が以前よりあがったのも事実だろう。しかし、それ以上にいくつもの峠を越えるうちに身につけた、ものの捉え方、心構えが果たしたものだったのだ。



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