妖精たちは死ぬことがあるだろうか?
ブレイクは妖精の葬儀を見た。
しかしアイルランドでは、妖精たちは不死であると言われている。
(イエイツ編井村君江訳「ケルト妖精物語」より)
ケルトの妖精は日本的に言うところの妖怪であり堕天使に近い存在らしい。
紗をまとった透き通った羽根を持つ乙女といったいでたちでなく、
ディズニーの「七人の小人」のような風体で、
人間にとって「良い行い」をすることはほとんどなく、
スピルバーグのグレムリンに近い存在。
とてもプライドが高く、偏屈で、それでいて感激屋のお調子者だったりもする。
自分たちのことを「フェアリー」などとは呼ばれたくなくて、
「グッド・ピープル」あるいは「ジェントリー」と言わなければ非常に機嫌が悪くなるそうだ。
気まぐれでちょっとした魔法が使える。
天国にも地獄にもいれずに地上に留まっている。
そんな多くの妖精話が息づいているアイルランドの地には、
実際に妖精道なるものもあるそうな。
貧しく厳しい自然と共に彼らは生き延びてきた。
イエイツは心の奥深くに残るような傷を受ければ誰もがそういう幻視家になれると言った。
過酷な日常のつい向こうに描く幻想。
目に見えない世界に対する追想。
それは逃げる訳にはいかない現実を生き抜くための糧だったのかもしれないと思う。
妖精が出てきてもおかしくないような風景には何度も出会ったのだが、
妖精に会いたいかと問われれば今はさてどうだろうか?
妖精に会いたいか?という質問は「幸せになりたいか?」に限りなく近い気がする。
すでに手に入れているならそれは愚問に過ぎない。 |