冒険野郎第一弾

二川ダム激流川下り

1996/6/21〜6/22

第六話「運命当日!」

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日曜日。

今日は静岡に帰らなくてはいけない。

正直、土日で静岡から和歌山まで往復するのはなかなかしんどいものがある。

冷静に考えれば普通は行くはずはないのだが、今回の企画、そんな冷静さをも吹っ飛ばすほどの魅力を感じていたのだ。


ホタルも見たし、バス釣りの体験もできた。短い時間ではあったが日常を忘れ、自然を満喫するというのはすごくリフレッシュにもなった。

うん。ほんと来てよかったなぁ・・・。

恐らく、日曜日。一郎が言ったように朝は6時ごろに起床して最後のバス釣りをし、9時ごろに引き上げ帰路につくということを予定通りにやっていれば、ほんとにそう思っただろう・・・。

・・・しかし。

現実は違った。

そして、そのことが我々を真の非日常空間に誘うことなど想像だにしなかったのである。それまでの非日常が色褪せるくらい・・・。

しかし、また、そうでなければ今日の冒険野郎は存在しなかったかもしれない。

そう考えると不思議と運命的なものを感じてしまうのも否定できない。

すべてを「運命」で片づけたくはないものだが・・・。


その日、我々は8時過ぎに起床した。

・・・いや、多分もっと以前に起きてはいたのだが、就寝が遅かったことや、疲れなどでとても起きる気分にはならなかったのだ。

何はともあれ、既にバスを釣る時間はとうに過ぎている。今更釣りにはいけないのは明白だ。12時過ぎには高速に乗っていたい。そうなると、このまま撤収して帰路につくのが自然だろう、と私は感じていた。

そう。若旦那もそう思ったに違いない。一郎の奥さんも。

・・・しかし、約一名、一郎だけはそうは思っていなかったのだ。


「なぁ。せっかくだから、川下りしない?いつもはこんなに水はないのにこれだけ流れていたら絶対面白いから!!」


・・・確かに面白いとは思う。それは事実だ。トムソーヤじゃないが、ボートに乗って川下りをしている我々を想像すると、すごく楽しそうじゃないか!!

そう、思う反面、もし、万が一のことがあったらどうなるだろう?

「無謀!!魔の川下り!!会社員3名水死。」

の題目が頭をちらつく。


面白いじゃないか!やってみよう!!

・・いや、やめておいた方がいい。

相反する気持ちが私の中で争っている。


・・・でも、あんましらしくないんだよな。そういう慎重な私って・・・。

そう感じ始めたとたん、結論は見えたも同然である。


「・・・やるか。」

そう決断すればあとは行動のみ。このメンバーはそれはめちゃくちゃ早い。

すぐに段取りを整え、一郎夫人をゴールである二川ダムに派遣。そこで我々が到着まで待機するように依頼した。

一郎・若旦那・私の3人がクルーである。早速、ボートに空気を入れ、準備を始めた。


「ライフジャケットはしっかりと着けんとな。」一郎がジャケットを皆に渡し、装着を確かめる。

準備完了である!


キャンプ場には我々以外にも家族連れなどいろいろと人がいた。その場でそのままボートを浮かべるには少し恥ずかしい気持ちもあったのですこし上流からボートに乗ることにした。

流れは結構速い。スリルは満点である。

しかし、ゴールは二川ダム。流されつづけることもないであろう、という安心感があったのも事実だ。


「さぁ、いくぞ!」

「まずはマスオさんが乗って!次に俺が!最後は西出さん!!」

岸から離れ、本流に乗るゴムボート。ぐんぐん速度が増していった。

激流下りの開始である。

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