宮崎県は年降水量が2,500mm強と、全国平均の1,700mmを優に超え、その豊富な水資源と温暖な気候を利用した農業が盛んに営まれています。けれども、宮崎平野を中心に広がるシラス台地の農業は、意外にも昔から干ばつの被害が多く、1950年代からはじまる畑地かんがい事業に支えられている部分が大きいのが実情です(河野,2009)。
そうした状況の中で、最近の雨の降り方の変化に加えて、地球温暖化によってさらに降り方が変わるとするならば、宮崎県の農業に大きな影響が及ぶ恐れがあります。
そこで、気象庁の「気候統一シナリオ」(A2シナリオ)による将来気候の予測結果を使って、50年後、100年後の宮崎県の降水量とその分布を計算してみました。
年降水量分布図県内の年降水量は増加することがわかりました。とくに50年後の増加量が増えていました。
また、山間部で降水量が増え、平野部で減少することがわかりました。
季節で見ると、
夏や秋に北部山間部を中心に降水量が増加することがわかりました。
冬は、平野部を中心に降水量が減少することがわかりました。
冬季:12月~2月の降水量が減少するということは、春先に多量の水を必要とする早期水稲栽培に影響を及ぼすかもしれません。
ただし、ここで使用した将来予測は、「極端に温暖化したとき」と仮定しています。
必ずしも、ここに示された通りになるとは限りませんので、結果を扱う際には注意して下さい。
・河野広(2009)水が原を変える 台地かんがい農業・宮崎県からの報告, 鉱脈社, 宮崎, pp.25-33.
この報告は、宮崎県による委託事業「宮崎県農業に関する地球温暖化の影響調査」(代表:有限会社メテオエム)の一環として、宮崎気象利用研究会の協力の下実施された研究の一部です。
この成果は、平成20年度宮崎県農水産業温暖化研究センター研究成果発表会でも報告されています。くわしくはこちら
詳しくは、竹下伸一(2010):気候変化による宮崎県の降水量とその分布への影響、宮崎大学農学部研究報告, 56,73-78, を参照下さい。